キャスティングとは
湾内のシーバスから100㎏を超えるマグロなど様々なパターンがあり、それぞれタックルやルアーの選択が異なってくる。ここでは、ジギングとセットで楽しまれることが多い10㎏前後の魚をターゲットとしたゲームを中心に紹介していきたい。
ターゲットとなるのは、ヒラマサの他に、ブリ、カツオ、シイラなどの海流に乗って回遊する魚達。どれも、沿岸の魚達とは別次元のトルクとスピードが魅力で、引きを楽しませてくれるのは間違いない。
シーズンは日本列島に黒潮が近づく初夏から初冬にかけてがメインになることが多いが、地域性が強くターゲットを変えれば年間を通じて楽しむことができる。
大物とのやり取りで一度主導権を魚に渡してしまうと挽回は難しい。常に釣り人がゲームをコントロールするためには、信頼できるタックルのセレクトはもちろんだが、技術や体力も必要とされる。
タックルについて
大物とのやり取りを考えると、やはり専用品がいいだろう。タックルを流用する場合は、大物が掛かっても対処できる強さと、船上での取り回しの良さは必須条件となる。これらの条件は、魚が取れる取れない以前に、安全性やマナーという面で必要なことでもある。特に乗合船を利用する場合はこの点には充分注意しよう。
タックルは、できれは複数用意しておきたい。あらかじめラインを巻いているスペアスプール(予備のスプール)があると重宝する。
トラブルが発生したときの緊急対応という意味と、使用するルアーやターゲットのサイズによって強弱を使い分けることはゲームを有利に進めるための鉄則でもあるからだ。
【ロッド】
船上での取り回しのよさと、ルアーの操作性を考えると、7~8ftの長さを選択するのがいい。特に乗合船などを利用した場合、キャストは安全性が高いアンダーハンドがメインになるので、長すぎると水面を叩いてうまくキャストができなくなるからだ。
初めて選ぶなら、適合ルアーウエイトが40~60gの物が使いやすい。このクラス+αの重さのルアーがキャストしやすい張りがあり、さらにストレスなく操作が行える軽さを備えているロッドが理想だ。
ロッドの強さも選択条件に入れておかねばならない。これは単にブランクが強いだけではなく、ガイドなどの付属部品の強度と、セットアップの堅牢さにも注目しておくべきだ。
リールシートもブレなくがっちりとリールを固定できるタイプの物を選びたいので、ロッド選びの際は使用するリールを実際に装着して相性をみることが必要だ。
ロングキャストもロッドに求められる条件だ。長さにある程度の制限があるオフショアキャスティングロッドだけに、張りと曲がりのバランスがいい、キャストしやすいものを選んでおきたい。
専用のリールは、内部のギアなどが強化されたスペシャルバージョン。ハンドルは巻かれている手に負担が少ないノブの形状をしているものがいい。10分足らずのファイトだけで、手の豆がつぶれてしまうことなど珍しいことではない。もちろんフィッシンググローブは必需品だ。
【リール】
キャスティングゲームの場合、リールはスピニングタイプを使用する。使用するラインが200m以上巻ける物を選んでおこう。
ターゲットの魚達は、遊泳速度が速く力が強いため、バイトした瞬間のラインへの負担が大きいので、スムーズな滑り出しをしてくれる高いドラグ性能を備えたものが望ましい。性能が高いと、安定したやり取りが可能なうえ、より細いラインが使用できるためロングキャストにも有利になる。
魚が手前に走ってきたときなど、ラインテンションを保つために高速での巻き取りも要求されるのでハイギアタイプが好まれる傾向が強い。船を走らせながらルアーをキャストしアクションをつけるためにも巻き取りの速さは必要だ。
ハイギアタイプのリールは、ルアーの回収や魚を誘う際のキビキビしたアクションをつけやすいメリットがある半面、巻き取りが若干重くなり抵抗の大きいルアーを扱うときや、やり取りの際に体力が必要になることを知っておこう。
ロッドと同様リールについても多くの専用品が発売され続けているのは、さらなる耐久性とドラグ性能が求められるからこそ。
たとえばドラグが滑りだしたときに出る摩擦熱への耐久性など、ショアからは出会うことのないような大物とのやり取りを前提に設計されているのだ。
【メインライン】
10㎏クラスがメインターゲットの場合、PEラインの2~3号を選ぶのがスタンダード。ナイロンラインなら最低でも4号は必要。フロロカーボンはこの太さだとスピニングリールに巻いたときのトラブルが多いのでおすすめできない。
PEラインは同じ強度なら他の素材に比べてより細くできるため遠投に有利。また、ラインの伸びが少なくロッドアクションをダイレクトにルアーに伝えられるので、キビキビとしたアクションをルアーに与えることができる。
PEラインはコシが弱くガイドに絡みやすいため、扱いには多少の慣れが必要であるが、発売されているタックルはPEラインの使用を前提に作られているものがほとんどなので、トラブルは軽減される傾向にある。特にこのクラスのキャスティングゲームに使用されるラインの太さなら、PEライン特有のトラブルはあまり気にならない。
強度はもちろんだが、滑り性能などの大物と対峙した場合少しでも有利になるようラインの性能にはこだわりたい。
【リーダーライン】
ショックリーダーとも呼ばれ、キャスティングゲームでは特にショックの吸収性が重視される。バイトの瞬間や、フッキング、キャスティングの際に掛かる瞬間的なインパクトをリーダーの伸びを利用して伸びの少ないPEラインの負担を軽くしたり、魚のバラシを防ぐのだ。
リーダーの太さは、狙う魚のサイズと釣り場の環境(たとえば荒い根が浅場にある場合)や、メインラインとのバランスにより決定する。
メインラインがPEの2~3号でターゲットが10㎏ほどの青物かシイラの場合は、30~60lbクラスのリーダーをセレクト。素材は伸びのあるナイロンがいいだろう。
長さは、短ければ短いほどキャスト時の抵抗が少なく飛距離が稼げるので有利になるが、太さと同様、魚のサイズや釣り場によって調整が必要になる。
キャストのための垂らしを一番長く取ったとき、リーダーがリールのスプールに1回だけ巻かれるようにするのがいい。キャストの際にPEラインに指を掛けずに済む長さは確保しておこう。
扱いやすさはナイロン、根ズレ対策にはフロロカーボンを選択する。
【ルアー】
ジギングとキャスティングを両方楽しむようなゲームプランの場合、中層から下はメタルジグで対応できるので、キャスティング用のルアーは水面から水面直下を攻められる物を用意するのが効率よくゲームを楽しむコツでもある。
主力となるのはトップウォーター系のプラグで、ペンシルベイトとポッパーは必ず用意しておきたい。
40~60gのルアーならサイズは15㎝前後がメインになる。場合によってはそれより大きなものもあるといいが、あくまで手持ちのタックルで不安なく釣りができる重量のルアーを使用することが大切だ。サイズが大きなルアーが有効なフィールドに行くときは、それに合ったタックルを準備して望むようにしなければならない。
表層での反応が悪い場合は、沈むルアーを選択する。シンキングペンシルやシンキングポッパーの
ほか、リップが付いたフローティングミノー、シンキングミノー、バイブレーション系のジャークベイトなどもバリエーションとして揃えておくと心強い。
ルアーのサイズは、ターゲットが意識しているベイトのサイズに合わせるのが基本。カラーについては、イワシ系に代表されるベイトに似せたナチュラル系、ピンクやホワイトといったアピール系を交互に使用して当たりカラーをいち早く見つけ出すのが重要だ。
狭い船上でのキャストでは安全への考慮が大切。フックのカエシはペンチであらかじめ潰しておくこと。
ギア&ウエア
キャスティングにおススメな装備と服装のご紹介。
【グローブ】
オフショア用のリールハンドルは大きなものが取り付けられていることからも分かるように、ファイトやリトリーブで手に掛かる負担は大きく、これはロッドを握る側の手も同様。釣り始めから終わりまでのコンディションを良好に保つためには必要なアイテムだ。
魚を触るときの滑り止めやケガ防止にも役立つ。
ラインブレイカーは、ノットの締め込みや根掛かりしたラインを切るときに、タックルの破損やケガを防いでくれる。
【ラインブレイカー/締め具】
リーダーシステムを組む際にノットを強く締め込むための専用用具。ライトラインならば手で締め込むことも可能だが、ノットの締め込みが弱いとリーダー抜けや、結び目が大きくなることによる絡みなどのトラブルにつながるため、キャスティングゲームを楽しむなら持っておきたいアイテム。
根掛かりでラインを切断しなければならないとき、これにラインを巻いて引っ張って切るため、ラインブレイカーとも呼ばれる。
金属製のパイプをホースに通したり、ビニールテープを厚めに巻きつけたりして自作も可能。
【偏光グラス/キャップ】
直射日光や紫外線対策というだけではなく、ファイト中のフックアウトでルアーが飛んできたり、船のロッドホルダーに立てかけているルアーのフックが刺さってしまうような偶発的な事故に対する安全確保の役割も大きい。
【デッキシューズ】
船上は常に水しぶきなどで濡れているためとても滑りやすくなっている。そんな場所で移動をしたり、踏ん張ったりを繰り返すので、滑りにくいシューズを用意しておきたい。
バランスを崩して突発的に足を踏み出した際、ぶつけてもケガしないように足先が露出したビーチサンダルタイプの使用は避けたほうが無難。
基本の操作
【アンダーハンドキャスト】
乗合船でのキャストは、危険防止のためアンダーハンドキャストがルールなので、まずはこれを覚えておく必要がある。
竿先、ルアーを船外に出した状態で、下から上に向かってスイングしてルアーを飛ばすのがキャストの基本スタイルで、慣れないうちは、ロッドをめいっぱい後ろに引いた状態からすばやく前に振りだすといいだろう。
【遠くに飛ばすには】
振り幅が小さくスイングスピードも遅いこの方法では、飛距離を出すことは難しいので、次のステップとして、ロッドの反発力を利用したキャストを覚えておくことをおすすめする。
方法は竿先から垂らしたルアーを振り子のように使い、その重さでロッドを後ろにしならせてからキャストするというもの。ルアーの重さを利用してロッドの反発力をため、それをうまく前方へのキャストにつなげるタイミングを覚えれば、飛距離を格段に伸ばすことができる。
【スイング】
スイングのとき、グリップエンドを持つ手を胸に向かって引き寄せながら、反対の(リールフットの部分を持つ)手を、目標に向けて押し出すようにすれば、ロッドの反発力を充分に利用でき、コントロールも付けやすい。
慣れないうちはルアーの垂らしを20㎝ほどと短くするのがコツだ。危険のない範囲で船から上半身を乗り出し、サイドハンド気味のキャスティングフォームを取れば、さらに飛距離を伸ばすことができる。
【オーバーヘッドキャスト】
岸からルアーを投げる際に最も多用するキャストフォームで馴染みは深いが、振り幅が大きいので混雑した乗合船には不向きなキャスト方法でもある。船長からの許可があり、安全を充分に確保できる場合のみ行おう。
アンダーハンドに比べ飛距離、コントロールともこちらのほうが有利なのは間違いない。
ロッドの弾力を生かしきることで飛距離はさらにアップする。ロッドの回転の支点となるグリップエンドを前に押し出し、ロッドを十分に曲げたところで、胸元に向けて強く引き込む」。このときリール、ロッドともに左右にぶれないようにする。キャストするときは、ルアーを船の中にいれないこと。
【安全の確保とトラブル回避】
キャストごとに、周囲の特に背後に人がいないことを確認する。隣との充分なスペースがない場合は、譲り合って順番にキャストすること。ちなみにミヨシ(船首)に近い人からキャストするのがマナー。
安全を確認したら、テイクバックの姿勢を取り、ルアーを振り子の要領で後ろに振って重さが乗ったところでスイングを開始する。
こうすることで、ラインに瞬間的に高い負荷が掛かるのを抑えることができるので、キャスト時のラインブレイクを減らせる。
また、リールのスプールからの初期の放出も安定し、ラインがガイドをスムーズに通過するので、ガイド絡みのトラブルを防ぎ、飛距離を伸ばすことにもつながってくる。
テイクバックのときはルアーが船の外に出るような立ち位置を取ること。こうすればルアーが後ろの障害物に当たることはないので、安全に、安心してフルキャストできるからだ。
狙う場所
【ナブラ】
分かりやすいのが、フィッシュイーターに追われて海面で逃げ惑う小魚の群れめがけてルアーをキャストするナブラ撃ちだ。
船が近づきすぎたりルアーをナブラの中に入れると、小魚が驚いて潜って消えてしまうこともあるので、ロングキャストとコントロールが必要なシチュエーションとなる。
狙うべきはナブラの端か少し離れた場所。観察しているとナブラの進行方向が分かるので、ナブラが進む方向の少し先にルアーを投げることが望ましい。
【鳥山】
イワシなどの小魚は鳥たちにも狙われているため、鳥が上空で群れ急降下している場所の下には、ベイトフィッシュが群れていると予想できる。鳥達がこのような行動を取り続けているときは、下に青物などがいて潜って逃げられない状態であることが多いのだ。
【潮目】
海の色や海面の波立ち方が違う場所の境目は、海流がぶつかっている場所の目印。この潮目は表層だけではなく、海中では壁のようになっていて、海水温、溶け込んでいる酸素や栄養分、塩分濃度などが異なっている。
条件のいいほうの海流を泳いでいるベイトフィッシュは、この壁にぶつかったときそれを避けるため、この境目に沿って回遊し、ときには溜まっているため、これを狙う大型回遊魚に出会う確率も高い。
【海上の浮遊物】
流木など大きめの浮遊物には、小魚が付いていることが多く、これを狙う大型魚がその周囲をうろうろしている可能性が高い。
シイラはその代表格で、まず、海上の浮遊物を探すことからシイラ釣りは始まるともいわれている。効率良く狙うためにはパヤオなどが有効だ。
【瀬、沈み瀬】
地形の変化も重要な要素、小魚の隠れ家になるだけでなく、潮流に適度な変化をもたらすことで、小魚たちのエサになるプランクトンが溜まり、波がぶつかってできたサラシには酸素が豊富に溶け込んでいる。このような魚が集まる要素を多く備えているのが、地形の変化なのだ。
ルアーの操作
狙った場所にキャストが決まったら、着水と同時にすばやく糸フケを回収し、ラインを張った状態にする。糸フケが出ている状態では、ルアー操作はおろか、着水直後にバイトがあってもフッキングすらできないからだ。
糸フケを回収したら、ロッドのシャクリとリーリングの組み合わせで、ルアーに生命感のある動きを加えてアピールさせる。
【ジャーク】
ロッド全体を使ってルアーを強く大きく引き込むのがジャーク。ロッドの引き幅が長いとロングジャーク、短いのをショートジャークという。
ジャークの後は、ごく短い時間ルアーをステイさせ、バイトチャンスを与える。そのタイミングで引き込んだ分のラインをリールに巻き取りながらロッドを戻し、フッキングと次のジャークの準備をしよう。
強く引かれたルアーは、波動と音を出しながら水面を移動したり、水中に頭を突っ込むような動きをする。
ルアーの動きにメリハリをつけるには、ある程度の強さ、速さでロッドを引き込むことが必要だが、
アピールが強すぎて魚の追いが悪いときは、より弱く、よりゆっくりとした動作を意識したスロージャークが有効になることもある。
【トゥイッチ】
ロッドの真ん中より先の部分の反発力を利用し、ラインを弾くように小刻みなシャクリを連続して入れるのがトゥイッチだ。
糸フケを回収した状態から、竿先を少し送り込んで小さな糸フケを作り、それを弾くように手首を使ったシャクリを入れ、ルアーに瞬間的なテンションを掛けて小さく移動させること。
シャクった分の糸フケは即回収し、間髪入れず再度竿先を送り込み、同様の操作を繰り返すのが操作のコツだ。
ルアーを引いた直後ラインテンションが瞬間的に抜けることで、ルアーのヘッド部分の動きが、大きくなるため、ペンシルベイトのドッグウォークのような操作の演出に役立つ。
【ハイスピードリトリーブ】
高速で巻き取ることにより、ルアーをアピールさせる。
ターゲットとなるフィッシュイーターは、かなり速い速度で泳ぐため、ハイギアリールで限界に近い巻き取り速度でも、バイトしてくる。
何度もチェイスがあるのに、ルアーをアクションさせたりステイさせたりすると、追うのをやめるようなときは、高速リトリーブを数回繰り返しながら、リトリーブ中の速度を少し遅くするタイミングをいれるだけでバイトしてくることもある。
気をつけたいポイント
ロッドを立てるときはルアーのフックが釣り人に掛からないように気を配ること。
フックを魚から外すときは、プライヤーを使う。慌てず魚がおとなしくなってから作業をはじめること。
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■分類、分布、特徴、性質、文化・歴史、釣り方、料理
・ヒラマサ
・ブリ
・シイラ
・カツオ
・クロマグロ
・キハダマグロ
*監修 株式会社ケイエス企画
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)