トウゴロウイワシ【藤五郎鰯】

トウゴロウイワシ【藤五郎鰯】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類トウゴロウイワシ目トウゴロウイワシ科ギンイソイワシ属
  • 学 名Hypoatherina valenciennei
  • 英 名Flathead silverside
  • 別 名トンコロ、ボライワシ、ウロコイワシ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

0b5173a8 2336 4fe0 8b20 b95e2db036f2

トウゴロウイワシ目は、6科48属約300種が分類されるグループだが、その大半がオーストラリア、ニューギニアを中心とした淡水魚であり、100種ほどが沿岸の浅海に棲息する海水魚である。ただし、分類については異論も多く、今後、分類体系が変化する可能性もある。
トウゴロウイワシ目の淡水魚で日本に棲息する在来種はいないが、日本でも一部の河川や湖に移入されているペヘレイなどが知られている。
トウゴロウイワシ科は12属60種からなり、ほとんどが小型の海水魚で、日本近海にはトウゴロウイワシ、ギンイソイワシ、ヤクシマイワシ、オキナワトウゴロウなど数種が棲息している。
イワシの名がついてはいるが、分類上では近いわけではなく、むしろダツやボラに近い仲間だ。
本種の分布エリアは、沖縄諸島を除く千葉県以南の日本各地、インド・西太平洋など。


特徴

25593ce1 548b 4146 87ec 52efb826ba1f

カタクチイワシに似た細長い体形で、体色は背側は緑色がかった青銀色、腹側は銀白色。目玉は大きく、体側の中央に太くて目立つ銀色の縦線が1本走っている。
イワシ類との相違点は、イワシ類は背ビレが1基なのに対し、トウゴロウイワシは背ビレが離れた位置に2基あること。また、イワシ類は胸ビレが腹寄りに付いているのに対して背側にあること、イワシ類のウロコは非常に剥げやすいのに対して非常に硬いことなどが挙げられる。
全長は成魚で10㎝程度のものが多く、最大でも15㎝程度である。
トウゴロウイワシ(写真)は、同じ仲間のギンイソイワシに見た目がそっくりだが、腹ビレの長さの中間に肛門があるのが本種で、腹ビレ先端より後ろに肛門があるのがギンイソイワシとなる。


性質

磯や堤防まわり、河口部の汽水域などに棲息し、海面近くを大群で回遊する。主食は、動物性プランクトン。
産卵期は6~8月頃で、卵は纏絡(てんらく)性沈性卵。纏絡卵とは、卵そのものには接着性がないが卵に糸が付いていて、この糸が物体にくっつく性質をもつ卵のこと。1週間〜10日ほどで孵化し、秋頃には全長3~5㎝程度に成長。翌春には成熟して産卵する。寿命は2年ほど。
近縁種のギンイソイワシは、本種と分布域が重なるが、より外洋に面した潮通しのよい場所を回遊している。


文化・歴史

九州の玄海地方の方言で、着物を脱がずそのまま寝てしまうことを「とんころ」または「とんごろ」という。トウゴロウイワシはウロコが剥げにくいことから、着物を脱がない様子に見立てられ、「とんころ」が「とうごろう」に転じたとされる。
そのほかの地方名としては、ウロコイワシ(有明海沿岸)、ネコイワシ(愛知)、イソイワシ(神奈川)、ボライワシ(神奈川)、ヤマハダラ(福岡県)など。


釣り方

トウゴロウイワシは、比較的潮通しのよい磯場や堤防などから釣ることができる。また、エリアによっては河口周辺の汽水域でも大きな群れが見られる。季節的には一年中釣れるが、水温が高くなる初夏~秋が釣りやすい。

【サビキ釣り】

8d9e1b62 8b86 4bbc a353 a6382f4bf6c0

釣り方は、カタクチイワシなどと同様にサビキ(枝状に5-10本の針が付いた仕掛け)釣りで狙う。仕掛けは一般的な魚皮やスキンのサビキでよいが、ハリは小さめのタイプを使用するとハリ掛かりがよくなる。
上~中層を泳ぐことが多い魚なので、解凍したアミコマセをヒシャクで少しずつ足元に撒いて群れを寄せ、それを視認しながら釣ると効率がいい。


料理

677ca139 de13 4bad 852c 616a78efa365

トウゴロウイワシはリリースする人が多いが、淡泊な白身の魚なので味わってみる価値はある。小魚の割にウロコがしっかりと付着しており硬いので、ウロコ引きや包丁を尾側から頭側に入れ、ウロコをきちんと剥がすのがおいしく食べるためのコツ。あとはイワシと同様、丸のまま、または頭を落として、さらに三枚に卸したりして料理する。
新鮮なものは、刺身(写真)にするとサヨリに似たさっぱりした食感でおいしい。手早く卸して、味わってみよう。ほか、唐揚げにしたり、塩を軽く振って網焼きにしてもいい。つみれにして、すまし汁や味噌汁にするのもお勧めだ。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

ページTOPへ