本種が属するメバル属には、日本産のものだけで33種おり、標準和名に「メバル」と付けられている魚だけでも、13種を数える。姿形が似ているものも多数で、混同や混称が多い。
ウスメバルは寒海性の大型メバルで、太平洋沿岸では北海道南部~駿河湾周辺、日本海沿岸においては青森県~対馬付近に分布している。メバルとともに市場に出回ることも多いが、それぞれ区別されずに「メバル」として扱われたり、春に漁獲されることから「タケノコメバル」とも呼ばれたりする。しかし、「タケノコメバル」を正式名称とする別の近縁種があるなど、非常に紛らわしい。
ウスメバル【薄眼張】
- 分 類カサゴ目フサカサゴ科メバル属
- 学 名Sebastes thompsoni
- 英 名Goldeye rockfish
- 別 名オキメバル、セイカイ、ハチメ、アカバチメ、カタナ、コムギ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
ウスメバルは、メバル類のなかではもっとも大きく成長し、全長は平均して35㎝ほどだが、50㎝近くになる個体もいる。
目は大きく張り出し、体色は薄い赤橙色。体側には5個の暗色斑がある。トゴットメバルによく似るが、トゴットメバルの黒斑は6個で、輪郭が丸みを帯びているのに対し、ウスメバルの黒斑はトゴットメバルよりも薄く、また、輪郭は丸くない。第1~4斑は背ビレの下に、第5斑は尾柄にある。下アゴにウロコがあり、涙骨の下縁には鋭い2棘がある。
ウスメバルは、12~1月に交尾し、メスは受精卵を体内で孵化させ、3~6月上旬に水深70~150m前後の岩礁域で産出する。このように、卵を放出するのではなく、体内で孵化する繁殖形態を「卵胎生」という。生まれた仔魚は外敵から身を守るため、数十~数千尾で群れ、およそ50日もの間、流れ藻に着いて生活する。そのため、流れ藻ごと沿岸の定置網で混獲されることもある。
体長5㎝くらいに成長すると、流れ藻を離れて沿岸の浅い海底に着底する。その後、成長に伴い深場に移動し、全長10~20㎝程度の群れは水深50~100m、全長16~24㎝以上の群れは水深100~200mに分布する。繁殖期に接岸するなどの移動はなく、成魚の生活圏でそのまま交尾や産仔が行われると考えられる。
ウスメバルは岩場近くで十数単位の群れをつくって生活し、頭を上に、体を斜めにしてじっとしていることが多い。群れにあたるとゾロゾロと釣り上がることからも分かるように、警戒心は少なく、群れの一尾が釣り上げられても離散することはない。
未成魚は小エビを、岩礁域ではモジャコ、カニ類、イカナゴなどを摂餌し、成魚では、魚類、カニ類、エビ類、イカナゴ、頭足類などを摂餌する。
ウスメバルは成魚になっても群れる習性が残り、水深の深い海域の海底にある岩礁のまわりで生活している。この習性を利用し、新潟県では金属やコンクリートで造られた人工魚礁を海底に設置し、集まったウスメバルを効率的に漁獲する取り組みが行われている。また、稚魚の群れが外敵から身を守る隠れ場所となる「増殖場」と呼ばれる構造物も造られている。
青森県の小泊・下前地区では、1994年よりウスメバルを「津軽海峡メバル」と名付けて出荷し、ブランド化を進めている。煮付けや塩焼きに調理されることが多いウスメバルだが、津軽海峡メバルは、生食向けの食材として理想的とされる。津軽海峡の速い潮の流れによる適度な運動、および豊富なエサによって育まれた良質な肉質と、白色半透明に部分的に薄く差し込む朱色の色味が食材として高く評価されている。現在では、大部分が築地や大阪などの大都市圏に出荷されている。
釣りの世界では、本種やトゴットメバル、ウケクチメバル、ヤナギメバルなど総称して「沖メバル」と呼ぶのが一般的だ。アミコマセを使ったコマセ釣りもあるが、ハリ数の多い胴付き仕掛けで狙うのが主流である。
【船釣り(胴付き仕掛け)】
竿は2.4~3mで、オモリ負荷50~80号。やや先調子気味の胴調子の竿がよい。深場を狙うため、リールは小型の電動タイプを使う人が多い。仕掛けは、白、ピンクのフラッシャーを巻き込んだハリを交互に付けたタイプと、フラッシャーのないタイプの2種類を用意し、サバが多いときや少ないときなど、その日の状況によって使い分けるとよい。
仕掛けの投入後、すかさずリールをフリーにして一気に海底まで送り込む。着底したらすぐにイトフケ(糸のたるみ)を取り、波の上下動で船が下がったときにオモリが底を打つ程度に調整し、アタリ(魚が食付いた信号)を待つ。アタリがあったら、リールを2回ほど巻いたり、ミチイトを出したりして追い食いを狙おう。
活性が高いとつぎつぎにハリ掛かりし、大物ほど上のハリに食ってくることが多い。巻き上げは一定のスピードで行う。仕掛けを一気に船の中に入れてしまうと絡んでしまうので、上のハリに掛かった魚を外しながら船内に取り込もう。
低脂肪・低エネルギーの典型的な白身魚。骨ごと食べない魚のなかではカルシウムの含有率はトップクラスだ。メバル類中もっともクセがなく、白身で軟らかい身は、やや淡白な味わい。脂もほどほどで、くどさがない。
煮付けにうってつけだが、塩焼きやソテーなども美味。淡白さが塩味があいまって、さっぱりとした味わいが楽しめる。また、潮の速いエリアで育ったものは、刺身(写真)で食べるのも極上だ。旬は春だが、通年食べることができる。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)