カイワリが属するアジ科には、約30属150種が認められている。本種は一種のみでカイワリ属を形成するが、インドカイワリ、コガネアジなど、21種が属するヨロイアジ属に分類する見解もある。
本種は、インド太平洋の熱帯・温帯海域から南東太平洋のイースター島沿岸、大西洋のアフリカ南西部沿岸の暖海域に広く分布する。日本では、太平洋側では金華山以南、日本海側では能登半島以南に分布している。
カイワリ【貝割】
- 分 類スズキ目アジ科カイワリ属
- 学 名Carangoides equula
- 英 名Whitefin trevally
- 別 名メッキ、オキアジ、ヒラアジ、シマアジ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
全長は平均20~30㎝ほどだが、大型個体は40㎝に達する。体高は広く、著しく側扁し、ひし形を呈する。歯は絨毛(じゆうもう)状で歯帯を形成し、唇は軟弱。体は細かな楯鱗(じゆんりん)に覆われており、体色は背部が暗青色、体側から腹部は輝くばかりの黄色がかった銀白色をしている。
背ビレと尻ビレの最後の軟条は、直前の軟条からやや離れている。また、第2背ビレには黒色、尻ビレには暗黄色の縦帯がある。幼魚期には、体側に6~8本の暗褐色の横帯が出るが、成長とともに消失する。
小型のシマアジやギンガメアジなどと混同されることがあるが、第2背ビレと尻ビレに縦帯があることなどで区別できる。
沿岸からやや沖合いの水深200m以浅の砂泥域の底層で生活している。
一般にアジ科の魚は遊泳力の高い肉食性で、主に小魚、甲殻類、貝類、頭足類、多毛類などを捕食するが、本種や近似種であるシマアジなどは、ネクトン(遊泳する水棲生物)を捕食する。さらに、海底の砂泥を堀ってベントス(海底を這う水棲生物)を漏斗(じようご)状の口を伸出させて砂泥ごと吸い込んで捕食する。
日本近海での産卵期は9~11月で、海表面を浮遊する球形の分離浮遊卵を産む。稚魚はクラゲに、また、幼魚はハタ科などの大型の魚に寄り添って泳ぎ、捕食者から我が身を守る俗にいう「ヒッチハイク行動」をとることが知られている。
二枚貝が左右に開いた状態、もしくは植物が芽を出した直後の双葉の状態を「貝割」というが、本種の尾の形がこれらの形に似ていることから「カイワリ」と命名されたといわれている。
地方名も多彩で、ツノアジ(神奈川県・相模湾、および静岡県・沼津市)、メカリアジ(静岡県・焼津市)、ピッカリ(神奈川県・真鶴町)、ヒラアジ(愛知県・一色町)、ゼンメ(鹿児島県・南さつま市)、メッキ(三重県・尾鷲市、広島県・倉橋島、長崎県・長崎魚市場ほか)など、各地で異なる名称で親しまれている。その他、「オキアジ」や「シマアジ」と呼ぶ地方もあるが、これらを標準和名とする別種もいるので、注意が必要だ。
カイワリは、船釣りやボート釣りで狙うのがもっともポピュラー。釣り方は、ビシカゴを使ったコマセ釣りとウイリーのシャクリ釣りが人気だ。
【沖釣り(ビシ仕掛け)】
120~130号のアジ用ビシやコマセカゴを使うため、使用するロッド(釣り竿)はコマセ(魚を寄せる為の撒き餌)が振りやすく、アタリ(魚が食付いた信号)が取りやすい1.8m程度の先調子のものが向いている。カイワリは口が軟らかいので、仕掛けには1.5㎜径、30㎝のクッションゴムを付けて口切れを防止しよう。
付けエサはオキアミがポピュラーだが、サバの短冊や小魚も使われる。オキアミは尾を切り、真っ直ぐになるようにエサ付けする。サバの短冊は、水中で回転しないように上端の中心にハリを刺すのがコツだ。また、キビナゴなどの小魚は下アゴから上アゴに通すようにハリを刺す。
仕掛けが着底したら、ただちに3mほど糸を巻き上げて竿でコマセを振り、底から5m以内の層を探るのが釣り方の基本。アジの仲間全般にいえることだが、澄み潮だと食いが悪くなり、濁りや朝晩の潮が暗いときに食いが立つ傾向がある。曇天や雨天の日もチャンスだ。
製品例
テンビン
クッションゴム
【沖釣り(ウイリー仕掛け)】
タックル(竿、リール、糸を含む道具一式)は、ボートアジと同じライトビシ用でOK。仕掛けは市販品のほか、ご当地のカイワリ特製仕掛けを売っているボート店もある。幹イト2~3号、ハリス1.5~3号・15~25㎝、枝間75㎝程度のものが標準だ。ハリはチヌバリ1~3号にウイリーを巻いたものを使う。なお、その日の状況によってはアジ用などのサビキ仕掛けのほうが食いがよいこともあるので、釣行の際は各種とりまぜて用意しておこう。
ウイリーのシャクリ釣りでは、なるべく少しずつコマセが出るように、ビシやコマセカゴのスリットを調整し、仕掛けを投入する。コマセの煙幕に仕掛けが同調するように、仕掛けをコントロールするのが肝心だ。カイワリは群れで回遊するので、釣れだしたらスムーズな手返しを心がけよう。
製品例
ウィリー仕掛け
大量に漁獲されることがないため市場ではマイナーだが、その食味はアジ類のなかでも最上の部類。ことに大型のものは、美味で知られるシマアジを凌駕(りょうが)するともいわれる。身はウマミ成分にあふれており、刺身や塩焼きなどで非常に美味。そのほか、煮付け、ムニエル、フライなどにも向いている。
ただし、カイワリは身が柔らかくなりやすいため、キープする際には釣ったその場ですぐに締めて血抜きをしてやろう。
なお、口の中にシマアジノエが寄生している場合も多々あるが、この寄生虫は無害なので、食べるぶんには問題ない。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)