タイと名が付く魚は日本近海だけで300種以上いるとされるが、いわゆる「あやかりダイ」が多く、マダイなどの仲間であるスズキ目タイ科の魚はわずか13種だけである。そのなかの一種であるキダイはタイ科キダイ属の魚で、房総半島以南から南西諸島を除く西日本に分布している。
キダイの近縁種としてはキビレアカレンコがおり、その名の通り、背ビレや胸ビレが黄色いことで見分ける。また、キダイとは分布域が異なっており、奄美群島以南の琉球列島沿岸に棲息している。ただし、キダイ、キビレアカレンコともにレンコダイと呼ばれることがある。
レンコダイ (キダイ)【黄鯛】
- 分 類スズキ目タイ科キダイ属
- 学 名Dentex tumifrons
- 英 名Yellowback seabream
- 別 名レンコ、レンコダイ、コダイ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
体は側偏した楕円形で、典型的なタイ型。全長は最大で40㎝になるが、釣りや漁獲されるものは30㎝程度のものが多い。
体色は朱色で背側は色が濃く、腹側は淡い。マダイのような体側の青い小斑点はなく、目から鼻孔、上アゴが黄色く、背ビレの下に淡い黄色い班がある。マダイに比べ、鼻孔周辺がへこんでいて、口はやや突き出ている。歯は円錐状に尖り、臼歯がない。
主に、水深50~200m程度の海域で群泳し、小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。
産卵は、海域によって多少差があるが、初夏と秋の2回とされる。マダイのように産卵のために沿岸に近づくことはなく、沖合で分離浮性卵を産卵する。体長は1年で全長約10㎝、2年で15~16㎝、3年で20㎝、4年で25㎝に成長する。
一部の雌は2~3年で成熟し、雌性先熟の性転換を行うため、5歳以上の大型個体は雄が多い。
キダイは「黄鯛」と書き、頭部が黄色みを帯び、背に黄色い斑点があるところからきた名である。市場においては、「レンコダイ」と呼ばれることも多い。これは群れでいるため、延縄(はえなわ)漁などで連なって漁獲されるさまからきたものである。キダイが漁獲されるようになったのは明治以降。沿岸部には棲息しないため、それまではほとんど獲られていなかったが、漁船や底引き網などが開発されるに従い、漁獲量が増加するようになった。
そのほかの地方名としては、ハナオレダイ(九州西部)、メンコダイ(愛媛)、コダイ(九州南部・高知)、バンジロ・バジロ(中国地方)、ベンコダイ、アカメ、メッキなどがある。
バンジロは、漢字では「飯代」。昔は米の飯は高価であり、一度にたくさん獲れるキダイをご飯の代わりにした、というのが由来であるとされる。
釣り人の間でもレンコの名前でなじみ深いキダイは、主に沖釣りのターゲットとなる。関東エリアではレンコ五目としてスポット的に出船することが多いが、西日本にはキダイの人気釣り場が点在する。一年中釣れるが、夏~秋が好シーズンだ。
【船釣り】
仕掛けは、釣り場によって胴付きタイプとテンビン吹き流し(仕掛けの先端が針又は擬餌針の仕掛け)タイプが使い分けられている。イラストは胴付き仕掛けの例で、釣り場によってはハリに装飾を施したり、ハリ数や枝間などが違ってくる。いずれも、深場を狙うため電動リール竿を使うのが一般的だ。付けエサは、オキアミや冷凍エビなどを使用する。
釣り方はキダイが着く根(海底にある岩場)をダイレクトに狙うスタイルなので、コマセを使用しないエリアが多い。確実に底取りをして、軽く誘いを入れながらアタリを待つ。
キダイのサイズは大きくても30㎝程度だが、産卵前の旬の味はマダイにも匹敵する。とくに新鮮なものは刺身でおいしく、霜皮(しもかわ)造りにすると美しい皮の色合いと皮の下のウマミの濃い脂を味わえる。
祝い事の引き出物などで供される小型の塩焼きの鯛は、キダイが用いられていることが多い。塩焼き以外にも、煮付け、唐揚げ、干物(写真)、潮汁、南蛮漬け、鯛飯、甘露煮、寿司など、さまざまな料理で味わえる。
ただし、キダイには微量の水銀が含まれるため、厚生労働省は妊婦が摂食量を注意すべき魚介類のひとつとしており、2010年発表の資料では、マカジキ、ミナミマグロ、クロムツなどとともに、1回の摂取量を80gとした場合、週に2回までの摂食に留めるよう指導している。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)