キュウリウオ科には11属31種が含まれ、そのうちキュウリウオ亜科には9属24種が分類される。同じ亜科にはキュウリウオ属、カラフトシシャモ属などが含まれ、シシャモ属には本種のほか2種が含まれる。これらは、北米大陸のアラスカからカリフォルニアまでの太平洋岸に分布する種である。
本種は、世界中でも北海道の道東地域を中心とする太平洋沿岸の一部地域だけに棲息する日本の固有種となっている。また、最近のDNAの解析により、日高地方に分布する群れと十勝・釧路地方に分布する群れは、遺伝的に異なることが確認された。
北海道のレッドデータブックでは「まだ絶滅のおそれはないが、保護に留意すべき種」として留意種(N)に掲載されている。
シシャモ【柳葉魚】
- 分 類キュウリウオ目キュウリウオ科シシャモ属
- 学 名Spirinchus lanceolatus
- 英 名Shishamo smelt
- 別 名スサモ、スシャモ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
やや側扁した細長い体形で、体色は銀色がかっている。背側は黄褐色、腹側は白色。側線は前方のみにある。
婚姻色が現れると、雄は全身が真っ黒になるが、雌には体色の変化は見られない。小さな脂ビレがあり、尻ビレは丸みを帯びた形状で広がっている。とくに雄は雌よりも尻ビレが大きく、産卵期にはさらに大きくなる。全長は最大で18㎝ほど。
口は大きいがキュウリウオほどでなく、上アゴの後端は瞳の真下ほどまで(キュウリウオは瞳の後端を超える)。舌上には小円錐歯がある。
キュウリウオとは、婚姻色の色、口の大きさ、尻ビレの縁がキュウリウオのほうが直線的であることなどで見分ける。
回遊魚であり、ゴカイ類、ヨコエビ類などの底棲生物を捕食している。
通常、生後2年で成熟し、10月下旬~12月上旬、産卵のために川を遡上する。産卵は河川を1~数㎞遡り、雄雌のペアで行われるが、産卵後、雌は別の雄を選び、数回にわたって産卵する。産卵数は8,000~20,000粒程度で、地域によって差がある。産卵後、親魚の多くは死ぬが、一部は海へ下り、翌年再び産卵に加わることもある。また、成熟に3年かかる個体もいる。
産卵のために遡上する川は、鵡(む)川、沙流(さる)川、十勝川、茶路(ちゃろ)川、釧路川、阿寒川、別寒辺牛(べかんべうし)川などが知られる。
卵は粘着卵で砂に付着し、自然条件下では孵化までに約150日を要する。春になって孵化すると、仔魚は流されて海へ下る。その年の秋には体長7㎝ほどになり、さらに1年で11~14㎝まで成長する。
北海道の苫小牧の東側に位置する勇払郡むかわ町は、シシャモを町の魚として定め、「鵡川ししゃも」の名で地域団体商標登録している。また、資源保護のため、漁期を10月上旬からの約1ヶ月間に限定したり、産卵河川の清掃や植樹などを漁協が行っている。そして、秋のシシャモ漁の前には、シシャモカムイノミという、豊漁を祈る儀式も行われる。
シシャモは漢字で「柳葉魚」と当てるが、これはアイヌの伝説に基づくものである。飢えに苦しんでいたアイヌの娘が、病身の父のために川岸で祈ったところ、柳の葉が川に落ちて泳ぎ回り、それがシシャモになったというあらすじである。アイヌ語では柳をスス、葉をハムというため、「ススハム」が転じてシシャモになったとされる。
シシャモが釣れる場所は道東~十勝エリアで、ある程度水深のある港に限られる。また、その年によって魚影が多い場所は変わってくるため、あらかじめ釣具店などで確認しておきたい。好機はシシャモが産卵を控えた10~11月。
シシャモはサビキ釣りやミャク釣りで狙うことが多く、釣り場によっては胴付き仕掛けでの投げ釣りも行われている。シシャモは夜釣りが有利とされているが、その日の条件によっては日中のほうが食いがいいこともある。
【サビキ釣り】
サビキ(枝状に5-10本の針が付いた仕掛け)釣りの場合、仕掛けはハゲ皮やオーロラ皮、ラメ入り皮などのハリに実績があり、その日の条件次第で釣れるサビキバリの種類が変化する。地元釣具店ではシシャモ専用サビキを販売しているので、店員と相談しながら選ぶといいだろう。また、ハリには2㎝ほどに短くカットしたアオイソメを装餌するのが当地流だ。コマセ(魚を寄せる為の撒き餌)はアミブロックを解凍して使うが、魚の活性が高い場合は、なくてもよい。
釣り方は、竿下に仕掛けを下ろして底ダナを狙い、仕掛けを軽く上下させて誘いを入れながらアタリを待つ。地元では、冷凍のアミブロックを網袋に入れてロープで底ダナまで沈めたり、夜釣りの場合は投光器で魚を寄せて釣っている人も見られるが、これらも魚の活性が高ければ無用だ。
産卵期の腹に卵を持った雌が珍重されるが、身は雄のほうがおいしいとされ、また大型のものほど味がよいとされる。
地元では、新鮮なものを刺身や寿司ネタとして食べる。天ぷら、唐揚げ、フライ(写真)、塩焼きなどのほか、甘露煮、昆布巻きなどにもされる。野菜とシシャモを味噌などで煮た鍋物や、ダシと醤油でさっと煮て卵でとじた柳川風にしてもおいしい。
丸干しの子持ちシシャモがよく知られるように干物が一般的だが、現在では漁獲量が減少しているため、市販品はキュウリウオやカラフトシシャモなどで代用していることが多く、本来のシシャモは流通量の1割以下である。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)