ウツボ【鱓】

ウツボ【鱓】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類ウナギ目ウツボ科ウツボ属
  • 学 名Gymnothorax kidako
  • 英 名Moray eel
  • 別 名ナマダ、キダコ、ウミウナギ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

1c51fa89 3ba8 4dae b4c8 e5b0a97427ca

ウツボ科には15属約200種が分類されており、その多くは世界の熱帯、温帯に分布している。国内において、本種は本州関東以南、南日本に分布する。


特徴

成魚の全長は80㎝ほどで、大きなものは体長1m、体重7㎏を超える。
細長い円筒形の体をもち、背ビレ、尾ビレ、尻ビレが一体になった特徴的な形態をしている。胸ビレと腹ビレはない。皮膚は厚く、ウロコは極小で皮下に埋もれている。体色は黒褐色と淡黄色のまだら模様で、多少の個体差がある。
口は大きく眼の後方まで開き、口内には鋭く尖った歯が並んでいる。また、喉の奥には、食べ物を食道へ送るための咽頭顎(いんとうがく)をもつ。前鼻孔、後鼻孔は吻(ふん)の先端近くと眼の近くに一対ずつ離れて付いている。鰓孔(さいこう)は小さい。


性質

03568c44 f759 4184 b4e6 19c1d918fd90

浅海の岩礁帯に棲息している。通常は岩の穴や陰などからあまり動かずにいるが、エサの気配を感じると獲物を求めて泳ぎまわる。食性は肉食で、魚類、甲殻類、頭足類、タコなどを好んで捕食する。
産卵の詳細については解明されていないが、ウナギ目のほかの魚にも見られるように、レプトケファルスと呼ばれる透明で木の葉のような形をした幼生期を経て成魚になることはわかっている。
ウツボは毒を持たないが、歯は非常に鋭く、アゴの力も強いことから「海のギャング」とも呼ばれる。


文化・歴史

ウツボという名は、その長い体が矢を入れる「靫(うつぼ)」に似ているからという説があるほか、ウツボが好んで棲み着く空洞を意味する「うつほら」という古語からきたという説がある。
ほかのウツボの仲間と区別する意味で、本種のことをとくにマウツボ、ホンウツボと呼ぶ地方もある。そのほか、ナマダ(東京都、千葉県)、キダコ(三浦、長崎県)、ウナギ(神津島、志摩)、ジャウナギ(伊豆)、ヘンビ(和歌山県)、キダカ(鹿児島県)などの地方名もある。学名内の種小名「kidako」は、この三浦地方などでの呼び名に由来したものである。
房総地方や南紀など、太平洋側の半島部ではウツボを食べる習慣のあるところが多い。とくに正月の食材として珍重したり、滋養があるとして妊娠中や産後の女性に食べさせる地方もある。


釣り方

Bf32a6c7 4c66 4ef0 97ce 7defa319b06c

ウツボは石物狙いでの定番のゲストだが、大物になると引きが強く、食味もいいので専門に狙ってみるのもおもしろい。
釣り場は、磯やゴロタ場、堤防などの根まわり。エサが豊富なエリアなら、水深1mほどの浅場でも釣ることができる。
釣りやすいシーズンは、夏~秋の高水温期。ただし、食味がおいしくなるのは秋~冬だ。また、ウツボは夜に活発になるので夜釣りが有利だが、状況がよければ日中でも十分に釣れる。

釣り方はイシダイ狙いと同様のぶっ込み釣りのほか、ブラクリ(オモリと釣り針が一体で、着色した物)釣りでも楽しめる。また、ウツボは小磯の足元に潜んでいることも多いので、長さ2mほどの竹の棒に20㎝ほどのハリスをセットしただけの簡易仕掛けで釣ることも可能だ。
エサは、サンマやサバなどの切り身のほか、冷凍キビナゴや現地で釣れる小魚を丸ごと使ってもよい。
アタリは断続的に竿先を叩いたり、ジワジワと引き込んだりするので確実にアワセを入れ、根や海藻に巻かれないように強引にリールを巻いてくればよい。
なお、前述のようにウツボは非常に歯が鋭く、万一噛まれるとひどいケガになることが多い。釣り上げてもしばらくは暴れまわるため、刃物で締めるのも容易でない。持ち帰る場合は、ハリスごと切ってクーラーに入れ、弱ってから処理するのが無難だ。

【ぶっ込み釣り】

A5bf5042 d0e4 4283 b0bc 9744524cafb8

根掛かりの多い場所を狙うので、捨てオモリ(オモリの上の糸を細くして、切れても良い様にする)仕様が使いやすい。ハリスは石物釣り用ワイヤやケブラーを流用するほか、10号前後のフロロカーボンでもよい。タックルは強めのルアー竿や投げ竿などが流用できる。

【ブラクリ釣り】

0e403a76 c862 4a0c 9aca 7208ba843157

堤防から足元のポイントを狙うなら、硬めのバスタックルを使うと楽しい。ラインはPE直結でよい。市販のブラクリはハリが小さいため、パーツを購入して自作してみたい。


料理

7ebc7a31 c38c 468a 9ae9 be79362cb5f4

蒲焼き

18978945 81bb 4496 93e0 6d16bb2d7596

たたき

ウツボの仲間は多いが、食味は本種が一番いいとされる。食の旬は秋~冬。
厚い皮と小骨(皮下埋没骨)があってさばきにくいので、ウナギなどと同様に目打ちでまな板に固定してから、よく切れる包丁で少しずつさばくとよい。また、体表のヌメリが気になる場合は、あらかじめ粗塩で揉んで水洗いすれば、匂いとともにきれいに取り去ることができる。
火を通した皮は香ばしくパリッとしており、コラーゲンを非常に多く含み、鶏肉を思わせるプリプリとした白身が美味。湯引き、煮付け、蒲焼き、唐揚げ、鍋物、天ぷら、つみれ、ムニエルなどにされる。一度干物にしてから、唐揚げにしたり焼いたりして食べる地方も多い。
高知県の郷土料理のたたきは、ウツボを火であぶって寝かせたあと、薄く削ぎ切りにしたものにネギやミョウガなどを散らし、ポン酢で食べる。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

ページTOPへ