マダラ【真鱈】

マダラ【真鱈】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類タラ目タラ科マダラ属
  • 学 名Gadus macrocephalus
  • 英 名Pacific cod
  • 別 名タラ、ホンダラ、ポンダラ(小型魚)

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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マダラは、タラ目タラ科に属する魚類である。『Fishes of the world』(Nelso, 2006)の分類では、タラ亜科は北大西洋に分布する魚類を中心に12属25種が認められている。温帯に分布するものや汽水域に入るものもいるが、ほとんどの種類は寒帯・亜寒帯の冷たい海に分布しており、その多くが重要な水産資源として利用される。これらのうち、日本近海にはマダラ、スケトウダラ、コマイの3属3種が分布している。
マダラは、カリフォルニア州サンタモニカ湾から茨城県沖を南限として、カナダ西岸、ベーリング海、およびオホーツク海までと、北太平洋沿岸に弧を描くように広く分布する。


特徴

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最大で全長120㎝、体重20㎏以上に達するマダラは、日本に棲息するタラ類3種の中では最大種である。体は紡錘形で、頭が大きく張り出しており、腹部が肥大する。
上アゴは下アゴよりも突出し、下アゴの先端には1本のヒゲがある。ヒゲの長さは眼径の3/4以上といわれ、根元が黒い。このヒゲは「触ヒゲ」といって、一種の感覚器官であり、エサを捕食するときなどに大切な役目を果たしているという。
体色は褐色で、背側には不定形のまだら模様がある。消化器官に通じない浮袋を持ち、背ビレ3基、尻ビレ2基を備える。
本種は太平洋ダラ(Pacific cod)で、北大西洋全域に棲む大西洋ダラ(Atlantic cod=Gadus morhua)と区別される。両種は形態的に非常によく似ており、以前は同種とする見解もあった。ところが、産出された卵の性質が異なることが明らかとなり、現在は別種として扱われている。


性質

冷水性の魚で、日本では北海道周辺に多く棲息する。分布の南限は、日本海側では島根県、太平洋側では茨城県である。棲息水温は2~4度とされているが、氷点下や水温10度以上の場所でも分布が確認されている。
東北太平洋岸におけるマダラの棲息水深は100~550m。5月下旬~6月上旬に水深40~100m帯に着底し、水温が上昇する夏季に深場に移動する。そして10月頃には水深250m前後の大陸棚斜面上部に達する。産卵期になると、水深100m以浅の海域に来遊することが明らかになっている。
成長は海域によって異なり、北太平洋側では北ほど遅く、南ほど早くなる。一方、寿命は高緯度域ほど長い。太平洋の南部では6~8歳程度であるのに対し、アラスカ湾やベーリング海では11歳以上まで生きる。高緯度域ほど成長は遅いものの、寿命が長いため、最大体長は海域間でそれほど差異はない。
産卵期は、東北沿岸では12~2月、北海道西岸海域では12~3月。産卵は、雌雄ペア、もしくは一妻多夫で行われる。卵は直径1㎜前後の球形で、弱い粘着性をもっており、海底へと沈む。孵化した仔魚は、沿岸域で浮遊生活を送るが、成長とともに夏~秋に水深30~50mの海底生活に移る。
マダラは成長が早く、1年で体長16㎝、2年で30㎝、5年で60㎝程度になり、8年になると90㎝前後まで成長する。成魚は口が大きく、なんでも食べる大食漢。「たらふく食べる」に「鱈腹」の字を当てるほどである。仔魚期は動物性プランクトンを摂食するが、成長していくにつれて、貝類、頭足類、甲殻類、小魚など、さまざまな小動物を捕食するようになる。


文化・歴史

マダラと人との関わりは古く、江戸時代にまでさかのぼる。マダラを「新鱈」と呼び、青森から江戸の市場まで運んでいた。「新鱈」とは、腹を割かずに、口からエラ、内臓を取り出し、塩を腹に詰め込んだ塩蔵品のこと。腹を切らないことから、切腹を嫌う武家に珍重され、年越しや初午の祝膳には欠かせなかったという。
また、干しダラのひとつで、マダラを尾を付けたまま三枚におろし、頭と腹の部分を取って天日で乾燥させて作る「棒鱈」は、京都のおせち料理の定番食材として知られているが、実は北海道稚内市の特産物である。稚内地方の早春は晴れて湿度が低く、風が強い日が多いため、棒鱈の製造に一番よい条件となっている。この地方で作られた棒鱈が遠く京都まで運ばれて、京都のお正月にはなくてはならないものとなったという。
『新釈魚名考』(榮川省造・1982年)では、はっきりとした斑紋を持つ蛇の蝮(まむし)を、古くは「まだら」と呼んでいたことや、魚にも体表に斑紋のあるものは「まだら」の地方名が多いことなどを例に挙げて、マダラという呼名は、体表に斑(まだら)があることによるものであろうとしている。


釣り方

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マダラといえば、一般的には冬がメインの釣り物だが、活性が上がる夏ダラも人気がある。白子はないが、身のウマミなら冬より上だ。
狙うポイントは、水深100~300m前後。胴付き仕掛けで狙うエサ釣りがもっともポピュラーだが、現在ではルアーで狙うジギングの人気が上昇中だ。

【船釣り(胴付き仕掛け)】

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船のエサ釣りでは、胴付き5本バリ仕掛けが基本。ミチイトと仕掛けの間にヨリ取り具を入れると絡み防止になる。
付けエサは、イカ、カツオ、サンマ、サバなど。幅1.5㎝、長さ10~15㎝の短冊形にカットして使う。イカは中心線に5㎝ほどスリットを入れるのもよい。サンマは半身を斜めにふたつに切り、塩で締めておき、尾ビレの付け根と胸ビレの硬い部分にハリを刺す。
釣り方は、底立ちを取ったらオモリが底を叩く状態でアタリを待つのが基本。ミチイトを潮の利き具合いに応じて3~5mほど送り、海底を這わせるように仕掛けを操作することで連掛けが期待できる。魚信は明確で力強く、一気に向こうアワセでハリ掛かりする。

製品例
タコベイト

【シャクリ釣り】

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北海道に伝わるユニークな釣法が、「シャクリ棒」と呼ばれる鉛でできた擬餌バリを大きくシャクってマダラを誘う「シャクリ釣り」。図は北海道・恵山沖仕様。シャクリ棒とミチイトとの間には2m程度のショックリーダーを付ける。両端はインターロック式スナップサルカンで接続。シャクリ棒は、潮の速さに合わせて0.8~1.4㎏を使用する。ハリは、タラバリ3本、またはイカリバリを付ける。ハリにタコベイト(タコに似せたビニール製の擬似餌)をセットする場合、カラーは赤、ピンク、夜光などが一般的だ。
釣り方は、シャクリ棒を着底させてから2~5m程度巻き、あとはひたすらシャクる。ある程度シャクったら、多少巻きタナを変え、またシャクる。船がつねに流れているので、ある程度シャクったら適宜、底立ちを確認する。また、釣れるまでは同じストローク・ピッチでシャクらず、変化をつけてシャクることが大切だ。
ヒットしたらリールを手で巻き、しっかりとフッキングさせたほうがバレは少なくなる。あとは、電動リールで低~中速で巻き上げればよい。

【ジギング】

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貪欲なマダラは、海底で踊るメタルジグにも果敢にアタックしてくる。
使用するジグは、水深が深いので後方重心のものが使いやすい。また、ロング系に大物の実績が高い。定番カラーは、ゴールドベースの赤金、黒金オレンジなど。そのほか、ピンクホロ、ピンク&グリーンホロ、オールピンクなどのピンク系がお勧めだ。テールフックは、スプリットリングを2個連結してジグに接続。タコベイトを付けるのもポピュラーな方法だ。
釣り方は、底を取ったら大きくジグを持ち上げて、ストンと一気にテンションを抜くように落とし、ポーズ。2~3秒竿先の反動を感じながら止める。ジグを見せ、止めて食わせる、というイメージだ。マダラはフォール中に食ってくることが多い。ヒットしたら、素早くイトフケを取りしっかりとアワセを入れよう。
なお、近年では、電動リールを使った電動ジギングや、PE1号前後のミチイトに150g程度のジグで攻めるライトスタイルも注目されている。


料理

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脂質が0.4%と非常に少ないマダラの身は、クセがなく、あっさりとした味わい。柔らかく淡白な白身は、ソテーやムニエル、フライのほか、汁物や鍋料理など、さまざまな料理方法でおいしく食べることができる。コクのあるクリームソースを使ったグラタンやシチュー、また、ほかの魚介類や野菜と一緒にブイヤベースにしても美味。マダラの新鮮なものは刺身に限るという人もいるが、水分が多く身割れを起こしやすいので、刺身でも昆布締めなどの工夫をするとよいだろう。
産卵前の鮮度がよいオスが手に入れば、何はともあれ白子の有無を確かめるべきである。クリーミーでウマミが強い白子は、湯引きしてポン酢でいただくのが最高。鍋や味噌汁に入れてもおいしい。
写真の「じゃっぱ汁」は、下ごしらえしたアラ、いちょう切りにしたダイコンとニンジン、昆布、水、酒少々、ネギの青い部分、ショウガと一緒に火にかける。ダイコンが柔らかくなったらシメジを入れ、味噌を溶く。湯引きした肝を加え、万能ネギを散らす。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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