
日本の太平洋沿岸に棲息するカツオは、夏に黒潮と親潮がぶつかる三陸沖あたりまで北上し、秋に親潮の勢力が強くなると南下する回遊魚である。
カツオが属するサバ科の魚類は、沿岸域に棲息していた現存のサバの原型的なものが、進化の過程で沿岸から近海へ、さらに外海域へと分布域を拡大しつつ分化したものと考えられている。したがって、カツオはマグロ類とともに広い生活圏を獲得した進化の先端にある魚なのである。近年、生化学的遺伝形質に基づく研究により、カツオはインド洋に起源をもち、大西洋、および太平洋に棲息域を広げていったものと想定されている。
カツオは世界共通種で、各大洋の表面温度がほぼ20℃以上の熱帯から温帯の海域に広く分布する。熱帯・亜熱帯の海域には一年中棲息するが、日本近海のような温帯域では、黒潮に沿って春に北上、秋に南下という季節的な回遊を行う。太平洋側に多く、日本海側ではまれである。
マグロ類と近縁の魚で、英名(=tuna)からわかるように、欧米諸国ではマグロの仲間として扱われる。日本でマグロと混合した呼び名がないのは、古くからカツオが「かつお節」などの干魚として好んで用いられ、主として刺身にされるマグロとは利用や消費の形態を異にする伝統によるものであると考えられる。