濃い目の味付けや油との相性抜群!
見た目がグロテスクなので敬遠されがちなシイラだが、食材としては一級品で、鮮度が良ければ刺身もOKだ。
少々水っぽさがあるものの、見た目はブリやヒラマサなどに似ているので、スーパーなどでは「沖ブリ」という通称で切り身が売られたりしている。
シイラは淡白な白身なので、今回は甘辛の漬け汁に漬けた照り焼きをメインに紹介した。仕上げに「つめ」(漬け汁と同じものを別鍋で煮詰めたもの)を塗ると、照りが出て、見た目にもおいしく仕上がる。
ちなみに、シイラは英語圏で「ドルフィン」や「ドルフィンフィッシュ」(イルカの様にジャンプするから?)とも呼ばれる。ヘミングウェイの小説『老人と海』で、このドルフィンフィッシュが登場する場面を、当初、イルカと和訳したところ、魚類学者の指摘でシイラに直して出版されたとか、捕鯨禁止を叫ぶ国でイルカを食べているじゃないかと抗議したら実はシイラだった、というエピソードも。
日本でのシイラは、古くから各地の祭りや祝いごとにも登場する魚で、高知では、雌雄が仲良く泳いでいることから、塩干ししたものが結納品になっていたそうである。
シイラのさばき方と「照り焼き」の作り方
シイラは、1メートルを超える程度の大きなものの方がおいしい魚だ、しかし、そんな大型魚をさばくのはなかなか難しいもの。
そこで、ここではさばき方を中心に解説する。なお、頭と内臓は、大きなゴミ袋などの中で処理しておこう。
●材料/2人分
シイラ・・・・・・・・・・400g程度
醤油、みりん・・・・・・・適量
(漬け汁、「つめ」に使う醤油ともりんは 1 : 1)
大葉など・・・・・・・・・適宜
①頭を落とし、内臓を処理し終わった状態からスタート。まな板の下に新聞紙を大きく広げておくと、あとの処理がラクになる。ウロコは、皮ごと取り除くので落とさなくてもよい。
②背側、腹側の両方から、中骨まで包丁を入れる。しっかりした骨があるので、その骨に包丁を沿わせるようにして切り進めるのがコツ。
③尾の部分から包丁を入れ、中骨と身を切り離す。骨に身が残る「大名おろし」になっても構わないので、大胆に切り進めよう。
④半身を切り分けたところ。反対側も同様に切り分け、三昧おろしにする。その後、それぞれの半身から腹骨をすき取る。
⑤柵取りと川の引き方①。半身を血合い骨の部分で切り分け、適当な長さに切って柵にする。皮の端を押さえ、包丁をまな板に沿わせながら皮を引くのがスタンダードな方法。
⑥柵取りと皮の引き方②。半身を適当な長さに切り分けたあと、血合い骨の部分から包丁を入れる。皮に当たったところで包丁の向きを変え、皮を引きながら柵取りする。
⑦柵取りと皮の引き方③。刺身や切り身で使う場合は、皮付きのまま柵取りし、身を削ぎ切りにして、最後に皮から切り離す。②、③は、皮の厚い魚で有効な方法。
⑧照り焼きはm漬け汁(同量の醤油とみりんを合せたもの)に、厚めの削ぎ切りにした身を漬け込んでから、あらかじめ熱しておいた網で中火で焼く。「つめ」を塗りながら仕上げるとよい。
シイラのフライ
サンゴが生息する南の島では、カンパチやヒラアジなどの大型魚類の多くが、食門連鎖によってシガテラ毒を持つので食材になりにくく、この毒を持たないシイラは人気だ。
ハワイではマヒマヒというマオリ語の名前で知られている。淡白な良質のシイラは、バターや油を使った料理に最適。なかでもお勧めは断然フライだ。
●材料/2人分
シイラ・・・・・・・・・・400g程度
塩、コショウ・・・・・・・適量
小麦粉、溶き卵、パン粉・・適量
揚げ油・・・・・・・・・・適量
レモン、タルタルソース・・適宜
塩、コショウをしたバットに切り身を載せ、両面にしっかり下味を付け、衣(パン粉は堅くなった食パンを粗くすりおろしたものがよい)を付けて、180度のサラダオイルでカラッと揚げる。これにレモンをしぼり、タルタルソースを付けて食べると絶品。これをパンに挟んだシイラバーガーも激ウマだ。
なお、大きくておいしいシイラほど、家庭では一度に食べきれないこともしばしば。そこで、柵取りした段階、又は下味を付けた段階でラップに包み、冷凍すると保存が利く。調理するときは、室温で自然解凍すればOKだ。
【料理監修:森山 利也】
千葉県富津市で居酒屋「はいから屋」を25年営み、現在は築地場外市場で曜日限定の店「JOJO BAR」をプロデュース。自ら店に立ち旬の魚や自家製の野菜など、新鮮な食材を使った様々なメニューを楽しめる。
そして包丁捌きの基本や海に関わることを学べるリアル「森山塾」も主宰。
また、ベテランの釣り人として各方面で活躍し、豊富な経験と見識を持つ。
上記は森山氏がビギナーにも無理なく作れるものとして紹介していただいたおすすめ料理だ。
【協力:株式会社 舵社】
参考本:スクラップブック of 釣果料理
http://www.kazi.co.jp/public/book/bk04/5126.html
4人の達人が贈る、全38魚種、144種のレシピを掲載
『ボート倶楽部』の連載や特集記事の中から、さと丸、森山塾長、Mr.ツリック、ウエカツ水産の4人が書いた釣果料理の記事だけを厳選&抜粋して集めた単行本。
釣った魚をおいしく食べる達人たちのおすすめ料理を作れば、みなさんの家の食卓が豊かになること間違いなし。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)