オキメバル(トゴットメバル)【戸毎眼張】

オキメバル(トゴットメバル)【戸毎眼張】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類カサゴ目フサカサゴ科メバル属
  • 学 名Sebastes joyneri
  • 英 名Saddled brown rockfish
  • 別 名オキメバル、アカハチメ、チョウチンメバル

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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トゴットメバルは、条鰭綱(じようきこう)カサゴ目フサカサゴ科メバル属に属する。
メバル属の魚は、沿岸の岩礁域から大陸斜面までさまざまな深さに棲息し、多くの種類が存在する。そのほとんどは北太平洋に分布するが、1種は南太平洋と南大西洋に分布し、4種が北大西洋に分布する。メバル属の多様性がもっとも高い地域は、南カリフォルニアで、56種が確認されている。
魚類学者の松原喜代松博士によると、フサカサゴ科のなかでもっとも魚種類数の多いメバル属は、眼隔(がんかく)域が突出しているか深く窪んでいるか、口を閉じると下アゴが上アゴよりも前方に突出するかしないか、頭蓋骨に棘があるかないかなどによって、ゴマゾイなどが属するヨロイメバル亜属、ウケクチメバルなどが属するサンコウメヌケ亜属、キツネメバルなどが属するクロソイ亜属、そして本種が属するメバル亜属など、10亜属に細分化される(なお、1993年に発行された中房徹次著の『日本産魚類検索』では、亜属には分類されていない)。
メバル亜属には本種のほか、メバル、ガヤモドキ、ハナヤナギ、エゾメバル、ウスメバルの計6種類の魚がいる。
本種は、太平洋側では岩手県より南、日本海側では新潟県より南に分布する。


特徴

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メバル属のなかでも小型の種で、全長は15~25㎝程度。メバルという名が付く通り、眼が大きく張り出している。体高の割には頭が尖っていて小さく、口は下アゴが張り出した受け口をしている。頭の棘は弱く、眼前骨下縁に2本の鋭い棘がある。
形状はメバルに似るが、本種は背ビレの基部から背にかけて明瞭な6条の暗色斑紋が並ぶことで容易に区別できる。また、沖釣りでは「沖メバル」として一緒に扱われるウスメバルにも酷似するが、暗色斑紋の形で見分けることができる。暗色斑紋が輪郭が角ばっているものがウスメバルで、輪郭が丸いものがトゴットメバルだ。 また、ウスメバルは本種に比べてやや寒流系で、太平洋側では房総半島より北の釣り場で釣れるのはウスメバルであることが多い。


性質

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メバルは沿岸の岩礁に棲息するが、本種は水深50~100mくらいの根(海底にある岩場)まわりに棲息し、底付近や根の頂上付近に群れをつくっている。また、大きな個体ほど群れの上にいることが多い。
メバル属は、カサゴと同じく卵胎生である。体内受精をするため、普通の魚のように卵を体外に出して子孫を増やすのではなく、交尾によって受精する。交尾したメスは、体内で受精した卵を孵化させ、ある程度の大きさになるまで育てる。そして、交尾から約1ヶ月後に、数千匹の稚魚を産む。
体内にある卵の大きさは、未受精卵で直径約0.6㎜の球形で、0.8㎜になると受精が行われる。受精後には、徐々に楕円形となり、長径2㎜、短径1.4㎜程度の大きさになると孵化する。稚魚は、母体内で全長4~4.7㎜になる頃には胸ビレができているが、卵黄物質は残存している。産出時の大きさは全長4~5㎜で、卵黄は完全に吸収されている。
産出された稚魚は、浮遊生活を送りながら動物性プランクトンを食べて成長する。5㎝程度になると底棲生活へと移り、次第に小魚や甲殻類、ゴカイ、小イカなどをエサにするようになっていく。


文化・歴史

本種は、地方によって呼び名が大きく違い、また、同じ名前で違う種を指すことも珍しくない。釣りの世界では「沖メバル」と呼ばれるが、これは特定の魚種のことではなく、本種に加え、同じく沖合いの深場で釣れるウスメバル、ウケクチメバル、ヤナギメバルなどの総称である。
トゴットメバルは、「戸毎眼張」「戸毎目張」「戸毎鮴」と書く。もともとは神奈川県・三崎の地方名であるが、榮川省造は、『新釈魚名考(1982年)』で、トゴットメバルのトゴットとは、外庭を意味する方言「ともと」の転訛であり、ウスメバルのウスとは、内庭を意味する方言「うす」からきており、トゴットメバルは「家の前の磯のメバル」であり、ウスメバルは「庭先にいるメバル」という意味ではないかと記している。


釣り方

トゴットメバルは、外洋の水深50~100m以深の荒い岩礁底などに棲息しているため船釣りで狙う。好ポイント(サカナの居る場所)に当たれば鈴なりの爆釣が味わえ、トップシーズンの竿頭(その日一番数多く釣った人)は50匹を超すことも珍しくない。周年狙えるが、一般的には1~4月くらいがもっとも釣りやすい時期といえる。
釣り方は、胴付き仕掛け(一番下にオモリを付ける仕掛)のエサ釣りやサビキ釣りが定番。難しい釣りではないので、中〜深場釣り入門にも最適なターゲットといえる。

【船釣り(胴付き仕掛け)】

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オモリの重さは、釣り場の深さや潮の速さで異なる。水深120mで、やや速い潮の平均的な釣り場であれば100~120号。150m以上なら150号を使用する。よって、竿はこの重さを背負えることが必要で、一般的にはアジビシ竿やイカ竿などのなかから、やや胴に乗るタイプを選ぶ。リールは、使用するPEラインを300m巻ける小〜中型電動リールをセット。仕掛けは、5〜8本の胴付き仕様。ビーズなどの装飾のほか、フラッシャーサビキも有効だ。
付けエサは、イカ、サバ、サンマなどの切り身が一般的。このほか、コオナゴ、ドジョウ、ホタテ貝のヒモなどをエサに使う地域もある。
仕掛けを投入したら一気に底まで送り、着底したらすぐにイトフケ(糸のたるみ)を取ってアタリ(魚が食付いた信号)を待つ。アタリがなければ、適当な間隔で底を取り直すのがコツだ。荒い根まわりを攻めるので、根掛かり(海底の障害物に針、オモリが引っかかる)しないよう、こまめに底を取り直すこと。アタリは竿先に明確に出るが、すぐに巻き上げず追い食いを狙おう。

【船釣り(サビキ仕掛け)】

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釣り場によっては、コマセ(魚を寄せる為の撒き餌)を使ったサビキ(枝状に5-10本の針が付いた仕掛け)釣りも行われている。サビキの種類は、サバ皮、ハモ皮、ウィリーなどが一般的。ハリにイカタン(イカの身を細かく切って着色したもの)やオキアミなどを付ける人もいるが、アカイサキやフグを誘いやすい。仕掛けは船宿によって多少異なってくるので、事前に確認してみたい。テンビンにアジやイサキの仕掛けをセットして、五目(複数の種類の魚)狙いをするのもおもしろい。
仕掛けを投入後、イトフケを取ったら軽くコマセを撒きながら3~5mほど誘い上げる。このとき、コマセを一度に出さないように注意すること。水深が深いので、コマセの詰め替えがタイムロスになってしまう。コマセがつねにパラパラと撒かれているようなイメージで丹念に誘いをかけよう。
アタリがあっても、慌てずに2匹3匹と追い食いを待つのがコツ。リーリングは一定の速度で行い、取り込みは1尾ずつ船中へ収める。


料理

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煮付け

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ホイル焼き

クセのない淡白なトゴットメバルは、どんな料理でも対応できる万能選手。定番の煮付けをはじめとして、刺身、塩焼き、酒蒸し、干物、唐揚げやフライにも向いている。
煮付けは、鍋に醤油、ミリン、日本酒を煮立ててからエラとワタを取ったトゴットメバルを入れ、落としブタをして煮る。皿に盛り、白髪ネギとカイワレダイコンをあしらって完成だ。
ホイル焼きは、アルミホイルにオリーブオイルを塗り、薄切りにした玉ネギを広げ、トゴットメバルを乗せる。シメジなど好みのキノコ類を並べてコショウを少々振り、ケチャップとピザ用チーズを乗せる。ホイルを閉じ、オーブンでこんがりと焼く。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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