初心者でも比較的釣りやすい!カマスのルアーフィッシング
堤防におけるルアーフィシングの対象魚のなかで、初心者でも比較的釣りやすい魚種のひとつが「カマス」だ。状況に応じてポイントやルアーを的確に選ぶことができれば、入れ食いになることも珍しくない。30センチ級ともなればファイトも強烈だし、持ち帰って刺し身やフライなどの料理でおいしく食べることもできる。ルアーフィッシングの入門に格好のターゲットを、ぜひ釣り上げてみよう!
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堤防におけるルアーフィシングの対象魚のなかで、初心者でも比較的釣りやすい魚種のひとつが「カマス」だ。状況に応じてポイントやルアーを的確に選ぶことができれば、入れ食いになることも珍しくない。30センチ級ともなればファイトも強烈だし、持ち帰って刺し身やフライなどの料理でおいしく食べることもできる。ルアーフィッシングの入門に格好のターゲットを、ぜひ釣り上げてみよう!
カマスにはいくつか種類があって、ルアー釣りでよくヒットしてくるのは「アカカマス」と「ヤマトカマス」。どちらも小型のイワシなどを捕食するために沿岸を回遊しているので、こうした小魚が豊富な堤防ほど有望な釣り場となる。
シーズン的にも、小魚が接岸しやすい初夏〜秋に釣れる場所が多い。ただし、エリアによって、またはその年によっては冬場にカマスが釣れることも珍しくない。また、カマスは回遊魚なので、それまでは連日のように釣れていたのに今日は群れが抜けてしまって全然ダメ、ということも日常茶飯事だ。したがって、どこの地域でカマスを狙うにしても、マメな情報収集は欠かせない。事前に、WEBや釣具店などの情報をチェックしてから出かけてみたい。
時間的には朝夕の薄暗いときが釣りやすいが、小魚が豊富な釣り場では日中に入れ食いになることもある。
いわゆるライトゲーム用のルアーロッドのほか、メバルロッドやトラウトロッドなどが使える。実際に選ぶときには、3〜12g程度のルアーをキャストできるスペックを目安にすれば良い。長さは6〜7フィート程度でOKだ。 リールは小型のスピニングをセットして、ナイロンの4〜8ポンドラインを巻いておく。細めのラインを使う場合はカマスの鋭い歯に切られることがあるので、その先端に8ポンドのリーダーを30センチほどサージャンノットなどで結んでおくとよい。
【魚バサミ】 カマスはウロコがはがれやすい魚なので、取り込んだ後は魚バサミで扱うと便利だ。最近は、ホルダー付きで腰に携帯できるタイプも販売されている。
【偏光グラス】 状況によっては、海中を群れで回遊するカマスが見えることも少なくない。偏光グラスがあれば、カマスがルアーを追って捕食するまでの動きを観察できるので、釣りの上達にも非常に役立つ。
使用する糸結び:サージャンノット
【ワーム+ジグヘッド】 カマスはさまざまなルアーで釣ることができるが、初心者が使いやすいのは「ワーム+ジグヘッド」の組み合わせ。ノーアクションのタダ巻きで釣れるので、ルアー釣りの入門にはピッタリなのだ。 ワームはメバルやアジ釣り用の流用でOK。サイズも2インチ程度で、ストレート形状のタイプが食いがいい。カラーはホワイト系が定番だが、状況次第ではピンク系やブルー系などにもヒットしてくるので数種類用意しておくと楽しめる。ジグヘッドは、メバル用の2g前後を流用すれば良い。 なお、カマスの鋭い歯でワームを噛みちぎ
【タコベイト】 ジグヘッドにセットするのはワームだけでなく、タコベイトを使ってもおもしろい。ワームは尻尾を食いちぎられるとヒット率が格段に下がってしまうが、タコベイトの場合は数本の脚を食われてもほとんど関係なくヒットしてくるメリットがあるのだ。 ジグヘッドにセットするときは、タコベイトの頭の側面にラインカッターなどで小さな穴を開けてからジグヘッドを頭の中に通し、開けた穴からジグヘッドのラインアイを出してラインを直結すればよい。
【ハードルアー】 高活性時のカマスは、小型のミノープラグやメタルジグといったハードルアーにも果敢にアタックしてくる。 ミノーのサイズは全長5センチ前後が目安。狙う水深に応じてフローティングとシンキングタイプを使い分けたい。 風が強い時や深場をメインに狙う場合は、メタルジグの出番。重さは5g前後で、細長いシルエットのものが万能に使える。
カマスが回遊してくるのは、堤防の先端やカドといった比較的潮通しが良く、エサとなる小魚が群れているような場所。また、状況によっては港内のスロープなどでも釣れることがあるので、積極的に広範囲を釣り歩くのもいい作戦だ。水深はある程度深いほうがカマスも回遊しやすいが、サビキ仕掛けでカマスが釣れている場所では比較的浅場でもルアーを追ってくる。
ただし、カマスは一日中釣れ続くことは少なく、特定の時間帯にバタバタと釣れるケースが多い。その要因は、潮位の変化や時間帯、エサとなる小魚の動向だったりするが、それまでまったく気配がなかったのに突然釣れ出すことがあるのがカマスの特徴。大型埠頭などでは、船のスクリューで海底が拡散された時にカマスが入れ食いになるケースもあることも覚えておくといいだろう。
【カマスの泳層をリサーチする】
カマス狙いで大切なことは、カマスの群れがどの泳層にいるかを把握すること。このため、まずはルアーをキャストしたら、いったん海底まで沈めてゆっくりと引いてみる。とりあえずアクションはつけずに、タダ巻きでOKだ。アタリが出るまで広角に探りを入れて、カマスの着き場を探ってみよう。
これでアタリがなければ、続いて中層から上層までを探ってみる。海底までルアーを沈めたときに15秒かかったとしたら、10秒、5秒といったように、段階的に沈める時間を短くして各層を探ることでカマスの泳層を絞り込めるわけだ。
この一連の探りの過程でアタリを感じたら、そのスポットを集中的に攻めることが大切。タダ巻きでなかなか食い込まない場合は、ルアーを引く速度に変化をつけてみたり、ときおり竿先を小刻みに動かして誘いを入れてみるのも効果的だ。
【ヒット〜ファイト】
カマスのアタリは、使っているルアーやカマスの活性によっても違ってくる。カマスが高活性の場合は一気に竿先を引ったくるような明確なアタリが出て、自動的に向こうアワセでフッキングしてくれるだろう。しかし、低活性時には竿先にわずかな重みを感じる程度のアタリしか出ないことも多い。この場合は竿先に神経を集中して何らかの違和感があったらロッドを確実に起こし、しっかりとアワセを入れることが大切だ。
うまくフッキングできれば、あとはカマスの小気味良いファイトを楽しみながらリールを巻いて寄せてくれば良い。足元まで寄ってきたら、最後はタイミングを見て一気に抜き上げよう。
前述したように、カマスが釣れる時間帯はそれほど長くないので、ヒットがあった時には手返しよく釣り続けることが大切だ。
カマスとは、スズキ目カマス科カマス属に分類される魚の総称である。カマス科にはカマス属だけが含まれ、アカカマス、ヤマトカマス、オオカマス、タイワンカマス、オニカマスなど、世界で18種ほどが報告されており、バラクーダ (barracuda)という英名でも知られている。
すべてが南方系の海水魚で、熱帯・温帯の海に広く分布する。沿岸域に棲息していて、サンゴ礁や岩礁の周囲で群れをつくり、活発に泳ぎ回る。食性は魚食性で、イワシなどの魚を襲って捕食する。オニカマスに至っては水中で人が襲われた報告もある。
日本でよく見られるのはアカカマス、アオカマス、ヤマトカマスの3種。一般的に「カマス」「ホンカマス」と呼ばれているのがアカカマス。「ミズカマス」という別名で知られているのがヤマトカマスだ。
アカカマスは房総以南から南シナ海にかけて広く分布するが、ヤマトカマスと混棲することが多い。
アカカマスの体は細長く、頭はロケット状に細くとがる。下アゴは上アゴより突き出し、上下両アゴに牙状の強い歯がある。背ビレは2基で互いに離れており、第1背ビレは小さい。胸ビレは短く、腹ビレは胸ビレの基部よりやや後方にある。
アカカマスとヤマトカマスはよく似ているが、アカカマスの背ビレは腹ビレよりも後ろ側からはじまるのに対して、ヤマトカマスの背ビレは腹ビレとほぼ同じ位置からはじまる。また、体色はアカカマスでは背面が赤味を帯びた黄褐色だが、ヤマトカマスでは灰色か淡い灰褐色だ。
アカカマスかヤマトカマスか、背ビレの位置と体色が両者を見分けるポイントになる。
そのほか、旬の時期がヤマトカマスは夏であるのに対して、アカカマスは冬であること、アカカマスはヤマトカマスに比べてウロコのきめが粗いこと、また、最大で50cm以上に達するアカカマスに対して、ヤマトカマスは30cmほどまでしか成長しないなどの差異もある。
アカカマス
ヤマトカマス
アカカマスの産卵は、卵巣の成熟や仔魚の出現状況から6~8月とされ、ワンシーズンに数回分けて放卵する。1回の産卵で20万粒を産み、産卵期間を通して、多いものでは100万粒前後を放卵する。
卵は0.7~0.8㎜の球形で、バラバラに分離して浮遊する。受精した卵は、水温21~26℃では24~30時間で孵化する。孵化直後の仔魚の大きさはわずか全長1.75㎜だが、全長7㎜くらいに成長すると、第2背ビレや尻ビレがほぼ完成。その後、腹ビレや第1背ビレが出てきて、成魚に近づいてくる。
体長5~10㎝の幼魚時代は、海藻の生えている岸近くの海面から5~30㎝の上層を群泳する。マアジやムツの幼魚と共生し、カマスは上層、マアジは下層、底近くにムツというように棲み分けている。成長するにつれて共生から離れ、沖の岩礁の根に移動して大きな群れをつくる。この群れは、「カマス千匹」といわれるほどの密度である。
体長は、1年で25㎝、2年で30cm、2.5年で32㎝あまりになり、最大で50㎝以上にまで成長する。
江戸時代には機織りの横糸を通す杼(ちよ)(=梭(さ))に姿が似ているところから、梭魚、梭子魚(さしぎょ)ともいわれた。また、雑穀や塩、石灰また魚の塩干物をいれる袋を叺(かます)という。叺は蒲簀(かます)ともいい、もともと蒲を編んで作ったことから、その名がある。この叺は、ワラムシロを二枚重ねるか半分に折って縫い合わせただけの袋で、口が大きいという共通点から、カマスの名がついたといわれる。
カマスといえば、干物が美味。背を開いたカマスの干物は、室町時代からはじまったといわれており、江戸時代の初期には、干物が売られていたことが古記に記されている。元禄8年(1695年)に発行された『本朝食鑑』(小野必大著)には、「カマスは各地の海でとれ、干物にして盛んに賞味されている。脂の多いものは淡赤色、脂の少ないものは黄白色で、京都や難波の魚市場では1.2寸(3~6㎝)ほどのカマスの子がよいものとされている」と書かれている。
また、正徳2(1712)年に発行された『和漢三才図会』(寺島良安編)には、「カマスの干物は6~7寸(18~21㎝)のものが多く、備前(現岡山県)から干物として出荷している」とある。さらに、江戸時代後期の天保2(1831)年に発行された『魚鑑(武井周作著)』にも、「カマスは生でそのまま焼いて食べてもよく、干物にしたものもまたうまい」と記され、これらの古書から、カマスが江戸時代を通じて干物として賞味されていたことがわかる。
アカカマスには多くの地方名がある。ヤマトカマスに比べてウロコが粗いことから「アラハダ」。魚体が円筒形で、竹笛の尺八に似て、体長も約一尺八寸ほどあるということから「シャクハチ」。また、赤みを帯びた褐色の体色の意から、「ドロカマス」。その他、オキカマス、アブラカマス、ヤエカマス、ナダカマス、ヤヨイなど、じつに多彩である。
身に含まれる水分は、イワシが65%、サバが63%、サンマが62%であるのに比べ、アカカマスは75%とやや水っぽい。そのため、背開きされて薄塩の干物に加工されることが多い。開いたカマスは、3%くらいの塩水に30~40分浸けてから日干しにすると、アミノ酸やイノシン酸が増えてウマミが最高となる。
干物をアレンジしたのが、味噌マヨネーズ焼き。作り方は、干物の上にスライスしたタマネギを散らし、味噌と日本酒、マヨネーズ、砂糖を適量混ぜたタレをかける。さらに、とろけるチーズを散らしてグリルで焼いて完成だ。
ほか、大型のものは刺身や寿司、塩焼き、煮つけにするとおいしい。
日干し
味噌マヨネーズ焼き
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)