シロギスのチョイ投げ釣り(入門者向け)

シロギスのチョイ投げ釣り(入門者向け)
  • 分 類スズキ目キス科キス属
  • 学 名Sillago japonica
  • 英 名Japanese whiting
  • 別 名キス、マギス、キスゴ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

釣り方

チョイ投げ釣りの魅力

「チョイ投げ釣り」は、本格的な投げ釣りとは一線を画す、ビギナーにオススメの釣り。何が釣れるかわからないワクワク感も、この釣りのおもしろさだ!
チョイ投げというのは、小さなオモリのついた仕掛けを軽く投げて、海底を探りながら釣る方法。堤防では近場に食い気満々の魚たちが潜んでいるので、ほんの20~30mほど仕掛けをチョイ投げするだけでも好釣果に結びつくことが多い。釣れる魚も、人気のシロギスをはじめとして、イシモチ、アイナメ、カワハギ、メゴチ、ベラ、カサゴなど、じつに多彩。仕掛けの投げ方は10分ほど練習すればだれでもマスターできる点も、初心者には魅力的だ。

チョイ投げ釣りの主な対象魚

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【シロギス】チョイ投釣りの人気ターゲット。初夏〜秋が釣りやすいが、場所を選べば一年中狙える。チョイ投げで釣れるサイズは15〜20センチがアベレージ。刺し身や天ぷらなどで美味。

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【イシモチ】漁港や河口の堤防などで、年間を通して釣れる。海に濁りが入ると群れで接岸してくるので、爆釣することも珍しくない。サイズは20センチ前後で、ときには30センチ超も竿を引き絞る。

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【メゴチ】シロギス釣りの外道(本命以外の魚のこと)とされているが、そのおいしさはシロギス以上とも言われる。体表にネバネバした粘膜を持つので、魚バサミを使って持つと良い。

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【ベラ】ベラにはいろいろな種類がいるが、写真は「キュウセン」という種類。関東では狙う人が少ないが、西日本では高級魚扱いされている地域もあり、美味な魚だ。

チョイ投げが楽しめる釣り場と季節

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チョイ投げ釣りは、足場の良い防波堤や岸壁で楽しむのがお勧め。堤防先端や船道、海藻帯などの好ポイントが多いので、砂浜で遠投する本格的な投げ釣りよりも釣果が良かったりするのだ。
季節的には、水温が上がって多くの魚たちが接岸してくる春~秋が釣りやすい。とくに、シロギスは初夏以降になると水深1~2mほどの港内の浅場で爆釣できることも少なくない。一方、低水温を好むアイナメやイシモチなどは、秋から冬にかけてが好機になる。もっとも、これらの傾向はあくまでも目安で、地域によって、あるいは年ごとにシーズンが変化することも多い。

使用するタックル

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【竿&リール】
この釣りでは仕掛けを軽く投げるだけでいいので、本格的な投げ釣り専用の竿は無用だ。お勧めなのは、長さ2m程度の軽量なルアーロッド(写真左)。竿先が軟らかめのものを選ぶのがコツだ。また、コンパクトロッドと呼ばれる振り出し式の竿もよい(写真右)。持ち運びが便利なので、電車で釣りに行く人にも人気だ。
いずれも、リールは「スピニング」と呼ばれるタイプの小型のものをセットする。これなら、サビキ釣りやルアー釣りなどと共用できて便利だ。
釣具の量販店では、竿とリールを組み合わせた「チョイ投げセット」も販売されているので、予算に応じてこれらを選ぶのもよいだろう。

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リールに巻くライン(ミチイト)は、ナイロン製の2号が使いやすい。ある程度張りがあって、トラブルが少ないのがメリットだ。
また、リールの扱いに慣れてきたら、PEラインと呼ばれる伸びにくいイトを使うのもお勧め。非常に感度に優れているので、ナイロンラインではわからない魚の反応や海底の起伏などが圧倒的な体感でわかるようになる。太さは0.6~0.8号ほどの細めのもので強度は十分だ。ラインが細くなれば、キャスト時の飛距離が伸び、潮流の影響を受けにくくなるメリットもある。
リールの購入時にラインも一緒に買えば、釣具店でラインを巻いてくれる。長さは150mを目安にしよう。

チョイ投げ釣りの仕掛け

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一般的な投釣りの仕掛けでは、「テンビン」と呼ばれるパーツを使うことが多い。チョイ投げ釣りでも、シロギス用などの小型テンビンを使うと仕掛けの絡みを防ぐことができる。オモリはナス型の3〜5号をセット。テンビンとオモリが一体化した「テンビンオモリ」を使うのも方法だ。
テンビンの先に付ける仕掛けは自作もできるが、最初は写真のような市販の完成仕掛けを使うと便利。チョイ投げ用のものなら仕掛けの全長が60cm程度なので、短い竿でも投げやすい。ハリのサイズは5〜7号を目安に選ぼう。

使用するエサ

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チョイ投げで使うエサは、ジャリメ(写真)かアオイソメが定番。ジャリメは軟らかくて細いので、シロギスなどの口の小さな魚の食いがいい。アオイソメはクネクネと動きがよく、匂いも強いので魚にアピールしやすい。

エサをハリに付ける方法

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ハリにつけるときは、通し刺しにするだけでOK。タラシの長さは、シロギス狙いなら1~2センチが基本

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イシモチやカレイなどが釣れるようなら、一匹まるごと付けてみよう

あると便利な道具類

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【エサ箱】 エサは購入時のパッケージのままでも使えなくはないが、イソメ類は蒸れやすいのでエサ箱があると便利。木製か二重タイプのプラスティック製がおすすめ。

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【魚バサミ】 チョイ投げで何かと便利なのがコレ。本来は体表がヌルヌルしたメゴチやヒイラギなどをつかむ道具だが、ハオコゼやゴンズイなどの毒魚をつかむときにも、これを使うと安全だ。

チョイ投げのキャスト(投げる)方法

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チョイ投げの基本であるオーバースローは、10分ほど練習すれば誰でもマスターできる。
まず、リールのベイルを返し、両手で竿を握って頭上に構える。このときのタラシ(竿先からオモリまでの長さのこと)は、20~30センチほどが目安。周囲の安全をよく確認したら、ゆっくり竿を前方に振り出し、オモリの重さを十分に感じた瞬間にラインを放す。タイミングがうまくいけば、仕掛けが前方に飛んでいく仕組みだ(写真)。仕掛けの着水後、海底に到達するまで待ってラインの放出が止まったらベイルを戻す。

仕掛けの誘いの入れ方

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投げ釣りでは仕掛けを投入した後、そのポイントでアタリを待つ釣り方(待ち釣り)もあるが、これだとちょっと効率が悪い。チョイ投げでは、仕掛けを手前に引き寄せながら釣るスタイルがオススメだ。これを「仕掛けをサビく」と呼ぶのだが、ポイントを広く探れるうえ、アタリも明確に出やすくなってくる。誘いの速度は、1mを5〜10秒ほどで引いてくるのが目安。アタリが頻繁にあるなら速め、魚の活性が渋そうなら遅めにサビくのが正解だ。

アワセの方法

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魚がエサに食ってくると、その動きがラインを通して竿先に伝わってくる。とくに、感度に優れたPEラインを使っていると、「ビンビン!」と明確にその感触を知ることができる。この魚の反応を「アタリ」と呼ぶが、そのパターンは魚種や状況によってさまざま。いきなり、竿先をひったくられるような強烈なアタリが出たかと思えば、その逆になんとなく竿先が重くなった感触がするだけのアタリもある。経験を積み重ねていくことで、こうしたアタリの違いによって魚がどんな状態でエサを食べているのかがわかるようになるが、最初はアタリがあったらしばらく待って、2度目のアタリが出たときに竿先をしっかり立ててみよう。この動作を「アワセ」と呼び、魚の口にハリを掛けるための大切なテクニックとなる。
アワセが成功して竿先に魚の重みを感じたら、そのままリールのハンドルを巻いて魚を寄せてこよう!


分類・分布

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キスの仲間は3属30種類ほどおり、すべて日本近海を含む西太平洋とインド洋に分布している。日本の沿岸に棲息するキス類には、本種のシロギスのほか、アオギス(ヤギス)、モトギス、ホシギスがいる。
シロギスは、北海道南部以南の九州までの沿岸部と朝鮮半島南部、台湾などに分布。
アオギスは、かつては東京湾などにも棲息していたが、埋め立てなどの影響で紀伊半島以東のものはほぼ絶滅したといわれ、現在では、四国の吉野川河口、豊前海、別府湾、鹿児島湾の一部と台湾にのみ棲息している。
モトギス、ホシギスは南方系のキスで、モトギスは沖縄本島以南、ホシギスは種子島以南に棲息し、沖縄にはシロギスはいない。


特徴

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紡錘形の細長い体型で、断面は円形に近い。小さく長い口を持つ。体色は淡黄白色で、腹側は白く、ヒレは透明。体側は光を反射すると虹色に光る。
体長は1年で10㎝、2年で18㎝、3年で21㎝程度に成長し、最大30㎝くらいまでに成長する。
アオギスは、シロギスよりやや細く体色が青みがかっており、第二背ビレに黒点があること、腹ビレが黄色であることなどで見分ける。シロギスより大きく全長40㎝程度まで育つ。
ホシギスは頭が大きく、死ぬと体側にいくつもの暗色の斑点が現れる。
モトギスは、ホシギスよりは細身でやや青みがかった体色をしており、背ビレには黒い斑点がある。


性質

砂底や砂泥底のエリアを好んで棲息し、底層を小さな群れで回遊する。主に多毛類やエビ類、アミ類、端脚(たんきゃく)類、稚魚などを捕食している。
産卵期は地域によって差があるが、6~9月頃が一般的。水深15mに満たない浅場で分離浮性卵を産み、約1日で孵化する。
シロギスは、卵や稚魚が受ける危険を分散させるため、1シーズン中に数十回も卵を産む多回産卵魚である。このため、同じ年の仔魚でも、晩春に産まれたものと秋に産まれたものでは成長に大きな差がある。水温が下がる冬期は水深30m以上の深みにまで落ち、ほとんどエサを取らずに過ごす個体が多くなる。
外敵の接近などの危険を感じると、砂の中に身を隠す習性があるのもシロギスの特徴。このため底引き網で獲りにくく、一般の市場には流通しにくい魚になっている。


文化・歴史

シロギスの投げ釣りの歴史は、釣り具の発展の歴史とオーバーラップする。リールを使用した投げ釣りは、大正時代に湘南の大磯ではじまったとされ、当時は舶来の木製のリールが使われていた。昭和20年以降になると、グラスロッド、ナイロンライン、スピニングリールが登場し、投げ釣りの爆発的な流行を迎える。
その後、さらにカーボンロッドや極細規格のPEラインが開発されたことで超遠投が可能になり、シロギスの投げ釣りが全国的に普及するとともに、各地で大会も催されるようになった。
キス釣りの歴史を江戸時代まで遡ると、東京湾における「アオギスの脚立釣り」が有名である。昔から「食味はシロギス、釣り味はアオギスが上」とされていたが、アオギスは非常に神経質な魚で、船釣りをしようにも船の影を感じただけでも逃げてしまう。そこで高さが1m以上もあるゲタを作り、干潟をゲタで歩きながら立って釣るという「ゲタ釣り」が考案された。
その後、漁師が脚立を使ってキス釣りをしたところ大漁であったことから、江戸時代後半からは脚立釣りが普及していく。以来、夏になると浅瀬に脚立が点々と並ぶ様子が、東京湾の夏の風物詩となる。
しかし、アオギスは産卵のためにきれいな砂干潟の水路が必要だったこともあり、東京湾の埋め立てや汚染により、昭和40年代にはその魚影も消え、脚立釣りの文化も途絶えてしまった。


料理

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天ぷら

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昆布締め

淡白でクセのない白身で、魚偏に喜ぶという字の通り、誰にでも喜ばれる味わいである。旬は晩春〜夏で、産卵後は味が落ちるが、秋にはまた回復する。
江戸前では代表的な天ぷらのネタであり、ほかに塩焼き、刺身、フライ、唐揚げなどでおいしい。昆布締めや酒と塩をふって軽く乾かした一夜干しなども美味。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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