水深わずか数10センチの超浅場でルアーフィッシング!
水深わずか数10センチの超浅場で、ルアーに果敢にアタックしてくる 「ムラソイ」という魚。このアグレッシブなターゲットを相手にすることで、「ルアーフィッシングって難しそう」という初心者の不安は一気に払拭されるはずだ。身近な場所で楽しめる痛快なゲームをご紹介していこう!
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水深わずか数10センチの超浅場で、ルアーに果敢にアタックしてくる 「ムラソイ」という魚。このアグレッシブなターゲットを相手にすることで、「ルアーフィッシングって難しそう」という初心者の不安は一気に払拭されるはずだ。身近な場所で楽しめる痛快なゲームをご紹介していこう!
ルアーフィッシングにはいろいろなジャンルがあるが、入門に適する条件としては、いつでもどこでも手軽に楽しめること、使用するタックルや道具がリーズナブルで扱いやすいこと、短時間で魚がヒットしてくれること、のすべてを満たしていることが大切だ。とくに、最後の要素はとても大切。「ルアーって、本当に釣れるの?」という初心者が抱きがちな疑問を解消するためには、とにかく素早く魚が釣れることが先決なのだ。その意味で、ここで紹介する「ムラソイ」は、コンスタントにアタリをもらえる貴重なターゲットなのである。
ムラソイは全国各地に棲息するポピュラーな魚で、エサ釣りなどでも定番の人気者だ。その性格はアグレッシブで、目の前を通り過ぎるエサ(ルアー)に果敢にアタックしてくる。ルアーで釣れるアベレージは体長20㎝前後だが、意外と強烈なファイトを楽しめることも魅力。
狙う水深が浅いため、ムラソイが石の下から横っ飛びでルアーにアタックしてくるのが見えることも多い。
ぜひ、ムラソイという好ターゲットを相手に、ルアーフィッシングの魅力を堪能してみたい。
このゲームの主な舞台となる「ゴロタ場」は、アプローチが比較的容易な場所が多く、狙うポイントもビジュアル的にわかりやすいので魚の着き場を知るのにも絶好の練習になる。反面、教科書通りのポイントだけでなく、予想外のピンスポットで連発したりもするため、中〜上級者にとっても釣りの奥深さを再認識できるゲームとなっている。
竿は、海の小物釣り用のルアーロッドが理想だが、淡水のトラウト(ニジマスなど)やブラックバスを釣るための竿でも楽しめる。長さは6フィート(約1.8m)前後が標準。これにセットするリールは、小型のスピニングでOKだ。ライン(ミチイト)は、ナイロン製の8ポンド(=2号)を巻いておこう!
【フィッシングブーツ】
手軽に楽しめるライトゲームといっても、安全装備はしっかり準備しておきたい。ゴロタ場の釣りでは、フェルトスパイク(またはスパイク)底のブーツが必須だ。
【ライフジャケット】
堤防や小磯ではもちろんだが、水深の浅いゴロタ場でも、どこに深みがあるかわからないのでライフジャケットは必ず着用したい。ウレタンの入った固定式タイプなら、転倒時のクッションにもなる。
【ワーム】
ムラソイを釣るためのルアーは、エビや小魚などを模した「ワーム」と呼ばれる柔らかい素材でできたルアーがお勧め。サイズは3〜5センチが万能に使える。形状やカラーはどんなものでもヒット率には大差ないので、水中で見やすい白色やイエロー、ピンク色などを選ぶといいだろう。
製品例
ワーム
【ジグヘッド】
ワームは単体で使うことはなく、いろいろな仕掛けにセットして使うのが基本だ。ムラソイ釣りの場合、使いやすいのは「ジグヘッド」と呼ばれるオモリが付いたハリ。メバル釣り用として売られているので、これを流用すればいいだろう。オモリの重さは、2g前後のものでOKだ。
製品例
ジグヘッド
ジグヘッドにワームをセットするには、あらかじめハリの軸にワームをあてがってハリを抜き出す位置を確認しておくとよい。それから、ワームの中心にハリ先を入れてハリの形状に沿って刺し、最初に確認した位置からハリ先を抜き出す。写真のように、ワームが真っ直ぐになっていればバッチリだ。
ムラソイは潮の干満に合わせて積極的に動き回るのが特徴で、干潮時には干上がってしまうような場所でも、潮が満ちてくるとどんどん接岸してくる。水深は20㎝もあれば十分にゲームが成立するのだ。逆に、軽量のジグヘッドで深場を狙っていくとポイントがぼやけ、重いジグヘッドを使うと根掛かりが多発してしまう。この釣りでは、水深1m以内の浅場を攻めることを心がけたい。
【まずは、波打ちぎわを“線”で攻める】
とにかくムラソイたちはビックリするぐらいの浅場に潜んでいるので、まずは波打ちぎわからチェックしていこう。軽くキャストしてから、ゴロタ石の合間を縫うようにルアーをタダ巻きしてくればよい。この範囲なら、根掛かりしても簡単に回収できる。食い気のある魚が相手なので、ルアーを引く速度はやや速めでOKだ。
【足元を狙う】
ムラソイは足元狙いも有効なテクニック。竿先から50㎝〜1mほどタラシを出した状態で、ルアーをポイントに落として軽く上下させるだけだ。この場合、竿を持つ反対の手でリールから出ているラインをつまみ、こちらを上下させる方法でもOK。
【アタリ=素早いアワセが重要】
ムラソイはルアーを食うと、瞬時に自分が隠れていた石の下に戻ろうとする。このため、ルアーを引いているときにヒットしたら一気にアワせて、リールを巻いて寄せてくることが大切だ。足元でヒットしたときも、有無を言わせずロッドパワーで引き抜こう。
「ソイ」の名がつく魚は、ムラソイ、クロソイ、ゴマソイ、シマソイなどがおり、いずれもメバル属に分類される近縁種である。
本種は、北海道南部以南から九州、朝鮮半島、中国の沿岸部に広く分布している。
全長15~30㎝ほどで、頭が大きくカサゴによく似ている。ただし、カサゴは体色に赤みが見られるのに対し、ムラソイは黒っぽい。そして、カサゴは尾ビレの端が角ばっているが、ムラソイは丸みを帯びているところが大きな相違点となる。
体色は黒褐色から茶褐色で、本種は小さな黒い斑紋が腹側に散らばっている。体色や斑紋の色には棲息環境によって幅があり、体色がまだらなもの、黒に近いもの、赤みのあるものなど、個体差が大きい。
水深の浅い岩礁域を好み、磯、ゴロタ場、防波堤の足元、テトラポッド(消波ブロック)帯など、硬い底質で変化のある場所に棲息している。
海底の物陰でエサを待ち、目の前を通ったり落ちて来たりしたエビ類や小魚などに飛びついて捕食する。
メバルなどと同じ卵胎生で、冬に受精した卵は雌の体内で育ち、春に体長5~6㎜の仔魚を産む。成長は遅く、30㎝を超える大きさになるには10年以上かかるといわれている。また、テリトリー(縄張り)が比較的狭く、長距離を遊泳する魚ではないため、一ヶ所のポイント(魚の居る場所)で釣り切られてしまうと、しばらくは魚影が絶えてしまう傾向がある。
ムラソイは、漢字で「班曹以」と書かれることが多い。「班」はその姿のとおり、体表に斑紋が多いことから、「曹以」は、磯魚(いそいお)が縮められて「そい」になったとされている。
ムラソイ類は、魚類分類学者である松原喜代松氏が1943年にムラソイ、ホシナシムラソイ、オウゴンムラソイ、アカブチムラソイの4亜種に分類した。しかし1984年、北大名誉教授の尼岡邦夫氏はムラソイを1種にまとめる。さらに1993年、現代の魚類学者の権威とされる中坊徹次氏が4亜種を暫定的に復活させる。そして、ムラソイとホシナシムラソイが種内変異、オウゴンムラソイとアカブチムラソイが種内変異、すなわちムラソイが2種に整理される可能性を示唆している。
いずれにしても、ムラソイの見た目はカサゴに酷似していることから、現在でも本種をカサゴと混同している釣り人や鮮魚店も少なくない。
唐揚げ
潮汁
プリプリとした弾力のある白身で、煮付け、塩焼き、唐揚げなどが美味。刺身もお勧めだが、大型のものは2日ほど寝かせたほうが、甘みとウマミと軟らかさが出ておいしくなる。
頭が大きいので歩留まりはやや悪いが、骨からいいダシが出るため鍋物、ブイヤベース、アクアパッツア、潮汁などにするのも絶品。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)