日本のサケ科の魚はイトウ属、イワナ属、サケ属などに分けられ、サケ属にはニジマス、サクラマス(ヤマメ)、サツキマス(アマゴ)、ビワマス、ベニザケ(ヒメマス)ギンザケ、カラフトマス、そしてサケなどが含まれる。サケというと、広義には河川で産まれて海で育つ種をまとめて指すことが多いが、種としてのサケは通称「シロザケ」と呼ばれる魚種である。
日本では太平洋側では千葉県以北、日本海側では九州北部以北の河川で遡上が見られるが、分布の中心は北海道、東北地方、北陸地方になる。日本は北太平洋のアジア側の分布の南限となる。
世界的には北米のカリフォルニアから朝鮮半島南部までの北太平洋、日本海、オホーツク海、ベーリング海に面した河川、北極海沿岸の一部の河川にも遡上している。
サケ【鮭】
- 分 類サケ目サケ科サケ属
- 学 名Oncorhynchus keta
- 英 名Chum salmon
- 別 名シャケ、アキアジ、トキシラズ
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
海洋生活期には、銀白色のウロコに覆われ、背部と尾ビレには黒点がなく、尾ビレに放射状に銀色の筋が入っていることからカラフトマスなどと区別できる。
産卵期を迎えると体色が黒ずみだし、成熟が進むにつれて赤・黄・緑色の斑模様がはっきりしてくる。また、雄は体高が高くなるとともに、口先が尖って上顎が下方に曲がるいわゆる「鼻曲がり」の状態になる。
稚魚は、背部は緑色の輝きの混じる茶色で、体側には6~14個のパーマークが見られる。降海後、7~8㎝に成長すると、パーマークは徐々に消え、背部の色も青緑色に変化する。
成魚は全長70~80㎝、重さ3~5㎏が平均だが、大きな個体では90㎝を超えるものもいる。寿命は平均3~5年、長いもので7年とされる。
成熟した親魚は、ほぼ100%の確率で母川回帰をする。産卵期の2~3ヶ月前から摂餌をしなくなり、体内に蓄積したエネルギーのみで河川を遡上。サケは、カラフトマスが産卵する場所よりも、流速が遅く砂利底から地下水の湧き出る場所を産卵場とする習性をもち、約3,000粒の卵を1~3ヶ所に分けて産みつける。産卵を終えた親魚は、すべての体力を使い果たして死んでしまう。
産卵から孵化、そして浮上して川を下り始めるまでの日数は積算温度で約960℃。水温が違う北海道と本州の川では産卵に適した時期も違うため、北海道では産卵期が早く9月頃、南では2月頃のところもある。
水温8℃の場合、約60日で孵化し、さらに50日ほどの間は腹部の卵嚢の栄養分を吸収しながら育つ。5㎝ほどに育って浮上し、3~4月頃になると降海する。当歳魚は、夏〜秋頃にはオホーツク海の水温8℃前後の水域で動物性プランクトンをエサとして成長する。水温が5℃になると北西太平洋へ移動して越冬し、さらにアリューシャン列島からベーリング海へ分布するようになる。この回遊生活を繰り返し、小魚などを食べながら成熟する。
サケの「有効利用調査」について
サケを正式に河川で釣ることができるのは、北海道や本州の一部の河川で行われている「有効利用調査」による捕獲のみだ。河川ごとに制限内容が違うので、管轄の漁協などで事前に確認しておきたい。なお、海でサケを釣る場合に関しても、河口付近をはじめとして、遊漁規制があるエリアがあるため、これも確認が必要だ。
シャケ、アキアジ、メジカ、トキシラズ、ブナなどの別名がある。
サケは古来より重要な食用魚であり、アイヌの人々はサケを「カムイチェプ」(=神の魚)と呼び、大切にしてきた。
また、東日本各地の貝塚からサケの骨が発見されたり、平安時代に編纂された「延喜式」には、河川遡上魚が献上されたという記事が載せられている。
江戸時代においても、東北地方においては藩政を支える重要な資源であり、アイヌ民族との主な交易品のひとつでもあった。
越後村上藩の藩士・青砥武平治は、1763年、藩内の三面川に分流を設けて、産卵適地に柵を作ってサケの遡上を阻止して産卵させる方法で自然増殖を促す「種川の制」を考案した。これはサケの人工的な増殖の先がけといえる。
本格的なサケの人工採卵・孵化は、1876年、茨城県の那珂川で試験的に行ったのが最初で、1888年には北海道の千歳川に本格的な孵化場が建設された。以来、各地に孵化場ができ、今や日本近海のサケは、北海道や東北地方で人工的に採卵・孵化・放流されたものが多数を占めている。
北海道の場合、道東方面で8月下旬頃から釣れ始め、太平洋岸から日本海岸へと11月上~中旬までが釣り期となる。大型が揃うのはシーズン前半といわれているが、その年の状況にも左右されるので好機をしっかりと見極めて釣行したい。
【ルアーフィッシング】
河川内でのサケ釣りでは、ルアーで狙うのが人気だ。
ロッド(釣り竿)はサケの強烈なファイト(引き)に対応できるように、適度にバットパワー(釣り竿の元竿の反発力)のあるタイプを使用する。ただし、ティップ(釣り竿の穂先)は軟らかめのほうが食い込みはいい。ルアーは8~18gのスプーン(食器のスプーン形状のルアー)や7~10㎝のディープダイバー系(深く潜るタイプ)のミノー(小魚型ルアー)が有効。なお、河川の釣り場ではバーブレス(カエシのない)&シングルフック(1本針)を規定しているので遵守したい。
サケが潜むのは、流芯エリアのボトム(水底)。キャスト(投げる)したルアーを川底ギリギリまで沈め、魚が定位するポイントを通過するようにトレース(なぞる様に引く)する。ただし、状況によっては魚が浮いていることもあるので、適宜、アタリダナ(魚が食う層)を探ってみたい。アタリがあっても早アワセせずに、竿先に十分な重みが乗ってから大きくアワセを入れて、確実にフッキング(針が掛る)させよう。
【ウキルアー】
海で狙う場合もルアー単体仕掛けで通用するが、よりスローなアクション(ゆっくりした動き)で誘いたい場合には、専用ウキとセットで使うのがお勧めだ。この仕掛けなら、重いスプーンでも表層をゆっくりと引くことが可能になる。さらに、特殊といえるのが、ルアーのフック(針)にエサを付けること。サンマやカツオの切り身などをハリにチョン掛け(エサの先端付近に針先を浅く刺す)にするだけで、ヒット率(魚が食付く確率)は格段にアップするのだ。
製品例
タコベイト
【フライフィッシング】
ロッドはシングルハンド(片手投げ用)、ダブルハンド(両手投げ用)ともに使えるが、ダブルハンドのほうが疲労度は少ない。リールはドラグ性能(糸巻き部が空回りして糸が出て行く機構の性能)に優れた大型タイプをセット。ラインは、海で釣るなら軽めのシンキング(沈む)を使用。河川ではシンクティップ(先端数mだけが沈む)も使いやすい。リーダーは、フロロカーボンのレベルライン(太さが一定の釣り糸)を使用。フライは、赤系のゾンカー(毛針の一種)ウーリーバッガー(毛針の一種)といった大型ストリーマー(小魚を模した毛針の種類)が有効だ。スレ掛かり(口以外の箇所に針掛りすること)が多いときはフックサイズ(針の大きさ)を小さくするとよい。
【本流釣り】
近年人気なのが、河川における本流釣りのスタイルだ。この場合、竿は強靱なビッグゲーム用(大物釣り用)を使うのが無難。普通の本流竿だと折れることがある。ライン(釣り糸)も大型に狙いを絞るなら3号以上を使いたい。エサは赤く染めたイカやサンマの切り身などが定番だ。付けエサ(針に付けるエサ)をアピール(目立たせる)させるために、ハリにタコベイト(タコの形状の擬餌)を装着する方法もある。
釣り方は、サケの遡上ルートに付けエサをゆっくりと流してアタリを取っていく。アワセを入れた直後のサケの走りは想像以上に強烈なので、十分に腰を落として竿の弾力をフルに活かしてやりとりしたい。
【投げ釣り】
シーズン中の北海道では、海岸にサケ狙いの投げ竿が林立している風景がよく見られる。
竿は波打ちぎわでライン(釣り糸)が叩かれないように、4.5m前後の長めのものを使用。仕掛けは市販の「アキアジ仕掛け」を使えばよい。自分で作る場合は、円柱形の発泡素材に反射シートを巻き、タコベイト(タコ形状の擬餌)とティンセル(金や銀などの細いテープ)を巻いたサーモンフック(サケ専用釣り針)セット擦る。オモリは流されにくい三角オモリを使用。エサはサンマやカツオの切り身、紅イカの短冊などが定番だ。
【船釣り】
船釣りの場合、大型のサケが複数のハリに食ってくることもあるので、ロッド(釣り竿)は強靱なものを使いたい。ただし、竿先は柔らかめのほうがエサの食い込みがよくなる。仕掛けは市販の胴付き(一番下にオモリが付く仕掛け)5本バリが基本。エサはサンマやカツオの切り身を使用する。
前アタリは竿先がわずかに曲がるだけなので、続いてさらに竿先が大きく曲がった瞬間がアワセのタイミング。サケの口は堅いため、確実にアワセを入れたい。
ルイベ
鍋物
新鮮なものは、生身を冷凍して半解凍状態でいただくルイベが絶品。塩焼きやムニエル、フライ、鍋物なども定番だ。もちろん、卵はイクラや筋子として美味だし、内臓のめふん(腎臓)、心臓、肝、氷頭(ひず)など捨てるところなくおいしく食べられる。さまざまな料理方法で味わってみたい。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)