●オランダ釣りの魅力
河川での釣り方はいろいろあるが、初心者がもっとも手軽に楽しめるジャンルのひとつが 「オランダ釣り」 。これはハリに装飾ビーズを付けた仕掛けを使う釣り方で、河川のオイカワやウグイなどを釣るには最強ともいえる釣法だ。
「オランダ釣り」とは、仕掛けにセットしたコマセカゴから寄せエサを効かせ、そこに集まってきた魚たちを擬餌バリに食わせるという海のサビキ釣りにも似た釣り方だ。主な対象魚は、全国各地の河川で見られるオイカワやウグイ、カワムツなど。こうした魚たちが棲息している河川なら、どこでもオランダ釣りを楽しむことができる。使用するタックルがシンプルで、状況がよければ簡単に入れ食いを楽しめるので、とくに初心者にはお勧めの痛快な釣りだ。
●オランダ釣りのフィールドとシーズン
オイカワやウグイなどが棲息している河川であれば、どこでも一年中オランダ釣りが楽しめる。ただし、エリアや季節によってはオランダ釣りが禁止されているケースも少なくない。とくに、初夏〜秋のアユ釣りのシーズンは、オランダ釣りを含めた擬餌バリでの釣りを厳しく規制している河川があるので、事前に管轄の漁協にオランダ釣りが可能かどうかを確認しておくことを忘れずに。
●オランダ釣りの主なターゲット
オイカワ
ウグイ
カワムツ
上の3種がオランダ釣りの代表的なターゲット。河川によってはアユも釣れるが、これもオランダ釣法による捕獲を禁じていることが多いので事前の確認が必要だ。逆にいえば、それだけオランダ釣法の威力が凄まじいことの証しともいえる。
●使用する竿と道具類
【竿】
大きめの河川で広範囲を狙うならリール竿、小河川で近場を釣るならノベ竿が扱いやすい。リール竿は、万能竿やルアーロッドなどで竿先が柔らかめのものがお勧め。長さは1.8〜3m。リールは小型のスピニングタイプで、ミチイトはナイロンの2号を100mも巻いておけばよい。ノベ竿の場合は、渓流竿や万能竿の4m前後が扱いやすい。
【ビク、竿立て】
釣れた魚を活かしておくには、淡水小物釣り用に売られている編み目の細かいビクがオススメだ。竿立ては、カゴに寄せエサを充填するときや釣れた魚を外していくときにあると便利。
【ボウル、水くみバケツ】
寄せエサを作ったり入れておくためのボウルかエサ箱は必需品。また、寄せエサで汚れた手を洗うバケツやタオルなどがあるとよい。
●オランダ釣りの仕掛け
リール竿の場合は、ミチイトの先端にオランダ仕掛けをセットして、下端にコマセカゴを装着すればよい。ノベ竿の場合は、仕掛け全体の長さが竿と同寸になるように、ミチイトの長さで調整する。ミチイトと小型サルカンとの接続は、ユニノットかクリンチノットと呼ばれる結び方にすればOKだ。
【市販のオランダ仕掛け】
オランダ釣りに使う仕掛けは、複数のハリに小粒の装飾玉を付けたもので完成仕掛けが売られている。ハリの数は6〜7本が標準で、浅場用の3本バリもある。ハリのサイズは3号前後。装飾ビーズは金色が定番で、ほかに蛍光やパール、赤などもある。最初は、金色タイプの7本バリを2〜3セット用意していけばいいだろう。
【コマセカゴ】
金網のカゴの底にオモリを鋳込んだタイプがポピュラー。重さは約2.5号。オモリを追加できるタイプもあるが、できるだけ軽めを使うのがコツだ。
●寄せエサの種類と使い方
オランダ釣り専用の寄せエサのほか、川釣り全般に使える汎用タイプを使うとよい。説明書の指定量の水で練って使うものの他、最初から練ってあるタイプもある。
コマセカゴに寄せエサを充填するときは、細長いダンゴ状に軽くまとめてからカゴに入れるだけでOK。あまりギュウギュウに詰めると、仕掛けが着底してもなかなか寄せエサが拡散しないので、魚の集まりも悪くなる。魚が寄り始めたら、寄せエサの量を半分程度にしてもよい。
●オランダ釣りの主なポイント
【トロ場】
流れが穏やかな深みを「トロ場」と呼び、オランダ釣りの典型的なポイントとなる。全然流れのない止水域では釣りにくいが、適度に流れのある緩やかなトロ場は、仕掛けの操作もしやすく、魚影もそこそこ濃い。川底の質にもよるが、どちらかというとウグイ狙いがメインになり、オイカワやカワムツは少なくなる。ただし、水温が下がってくるとオイカワが群れでトロ場に集まるので、入れ食いを楽しめることも珍しくない。
【瀬】
高水温の時期に狙ってみたいのが、比較的流れが速く水深の浅い「瀬」。あまり流れが速すぎると釣りにくいが、普通にウキ釣りができるぐらいの流れなら、オランダ釣りも十分に成立する。水深は50㎝以下が釣りやすく、ほんの足首ぐらいの浅場でも楽しむことが可能だ。
●オランダ釣りの実践テクニック
1.リール竿の場合は狙いのポイントの上流側に仕掛けを軽くチョイ投げし、ノベ竿の場合は上流側に仕掛けをいっぱいに振り込む。カゴ(オモリ)の着底後、仕掛けが流れない場合はその位置で仕掛けを多少緩めてアタリを待つ。仕掛けが流れる場合は、そのままラインのテンションを保ちながら竿先で追いかける。
2.最初に魚がハリに食いついてアタリが出ると、その弾みで仕掛けが動いて誘いの効果が期待できる。何度かアタリを待って追い食いさせたら、竿を立てて一定の速度でリールを巻いてくればよい。
3.魚を取り込んだら、仕掛けにテンションを保った状態で、一番下のハリから魚を外していく。ラインが緩むと、魚が暴れた拍子で絡んでしまうことがあるので注意したい。
●仕掛けと寄せエサを同調させるのがコツ
たとえば、水深の浅い瀬では、根掛かりの少ない小石底や岩盤底を狙ってみたい。ポイントの上流に仕掛けを投入して着底させたら、ラインを緩めにして流れのままにカゴを転がすようにすると、自動的に寄せエサとハリが同調する。仕掛けが自分の正面まで流れてきたら、仕掛けを回収してコマセを詰め直し、再度上流に投げる。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)