●見た目が悪いヤツほど、味はいいという真実
カメノテ、フジツボ、ヒザラガイ……。いずれも、小磯でよく見かけることのできる軟体動物や固着動物の仲間たちだ。しかし、あまり美しくない見た目のせいか、これを食べたことのある人は少ないと思われる。というか、これらを食用として考える人も少ないだろう。
ところが、地方によっては日常的に食されていて、高級食材扱いしているエリアもある。たとえば、カメノテなどはゆっくりかみしめていくと、じわじわとウマミが染み出てくる。誤解を恐れずに言うと、タラバガニと同じ風味がするのだ。
フジツボやヒザラガイなども市場には縁のないB級食材だが、それらも単に食えるといったレベルではなく、かなりおいしい味が自慢なのである。房総や伊豆などでは、こういった珍味を普通に提供している民宿もあるぐらいだ。騙されたと思って、一度、その味を試してみてはいかがだろうか?
●食べて納得の小磯の珍味
【フジツボ】
殻が硬いので貝のようだが、エビやカニの仲間。味もウソみたいだが、エビに似ている。クロフジツボ、アカフジツボなどが大きくて食べやすい。
【カメノテ】
名前通り、亀の手のような生物でフジツボの仲間。岩のすき間にくっついているが、根元の部分のほうがおいしいので、磯ガネなどをこじ入れて採取する。
【ヒザラガイ】
どこの磯でも見られるワラジのような固着動物。岩にぴったり張り付いているので、ドライバーなどではがそう。蒸して食べると軟らかくておいしい。
【ヤドカリ】
これまたウソのようだが、ヤドカリはタラバガニやハナサキガニの仲間。大型のオニヤドカリなら食べごたえがあるが、写真のような小粒のヤドカリは汁物にできる。
●採取にはドライバーや磯ガネを使うと便利
これらの珍味たちは岩に張り付いているので、100円ショップで買えるマイナスドライバーやヘラなどではがし取ると良い。ただし、カメノテはかなり頑丈に岩にくっついているので、釣具店などで売られている磯ガネを使うといいだろう。
●海水でゆでるだけでも美味
B級海鮮は、単に塩ゆでするだけでもおいしく食べられる。ちょっと下ごしらえが面倒なのはヒザラガイだが、これは軽く塩ゆでした後、網袋などに入れてもみ洗いすると、あの堅い甲羅を簡単に取り去ることができる。料理するのが面倒なら、全部まとめて味噌汁にしてしまうのが手っ取り早くておいしい。それぞれの具材から染み出る濃厚なダシが最高なのだ。
なお、ヒザラガイなどを食べてアレルギーを発症するケースがまれにあるという。アレルギー体質の人はヤドカリぐらいにしておくのが無難かも知れない。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)