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通常、干潟での遊びといえば潮干狩りが定番だ。ファミリーや仲間同士でアサリやハマグリを探す風景は、春〜夏の干潟の風物詩にもなっている。しかし、潮干狩り以外にも、一部のエリアで密かに楽しまれているユニークな遊びがある。それが、ここでご紹介する「アナジャコ釣り」だ。
アナジャコは、全国各地の干潟に生息している甲殻類の仲間。日頃は干潟に掘った深い巣穴の中に住んでいるため、普通の方法でアナジャコを採取するのは難しい。そこで、考案されたのが「筆」を使って釣り上げるという斬新な方法だ。子供はもちろん、オトナでも夢中になれる遊びなので、ぜひ、挑戦してみてはいかがだろうか？
体長は約10センチほど。見た目はザリガニに似ているが、ハサミ腕は小さく、体を覆う殻も軟らかい。実際にはヤドカリの仲間だ。
身には多少クセがあるものの、唐揚げや天ぷら、味噌汁などで食べることができる。また、一部のエリアではクロダイ釣りなどの付けエサとしても利用されている。
アナジャコ釣りは、全国各地の干潟や河口域で楽しめる。アナジャコが潜む場所には小さな巣穴が点在しているので、それを目安に「釣り場」を選ぶといいだろう。
季節的には、潮干狩り同様に昼の潮が大きく引く春〜夏がシーズン。とくに、干潮時に大きく潮が引く大潮〜中潮の干潮前後がアナジャコ釣りのチャンスタイムだ。
【筆】
アナジャコを釣り上げるための筆は、先端の太さが1.5センチほどのものが使いやすい。習字用の太筆を使う人が多いが、細めの塗装バケを使うのも方法だ。100円ショップやホームセンターで安売りしている筆でOKなので、5〜10本ほど用意しよう。なお、筆には細ヒモを結んでおくと、アナジャコに穴の中に引きこまれたり、砂に埋もれてしまったときに紛失しにくい。
【ジョレン】
アナジャコの巣穴を覆っている泥を薄くはぎ取るのに使用する。ホームセンターで2000円ほどで購入できるが、スコップやシャベルでも代用できる。
【クーラーボックス】
採れたアナジャコを食べる場合は、氷や保冷剤などで冷やしたクーラーボックスで持ち帰るとよい。
この釣りは、巣穴に異物が侵入するとそれを追い払うアナジャコの習性を利用したもの。以下、実際の釣り方を見てみよう！
1．アナジャコが釣りやすいのは、巣穴が密集していて海水が少しだけ干上がっているところ。こうした場所を見つけたら、ジョレンなどで泥の表面を薄く削るように掘っていく。こうすることで、巣穴の直径が２〜３センチほどに広がって筆を差し込みやすくなるのだ。
2．巣穴が現れたら、そこに筆を差し込んでいく。差し込む深さは15〜20センチほど。穴にアナジャコがいれば筆を押し出そうとするため、その動きが筆に現れるはずだ。反応がない場合は、筆を上下に動かして誘ってみるのも効果的。
3．筆がゆっくりと持ち上がってきたら筆の柄を静かに持ち、押し上げる動きに同調するように筆をゆっくりと持ち上げていく。アナジャコの脚が見えたら、筆を持つ反対側の手の指でしっかりつかまえる。
4．うまく脚をつかめたら、ゆっくりと引き出す。無理して引っ張り出そうとすると、アナジャコは脚だけ切って逃げようとするので（脚は再生する）、慌てずにアナジャコとの駆け引きを楽しもう！
アナジャコを食べる場合は、冷えたクーラーボックスで鮮度を落とさないように持ち帰りたい。採れた場所によっては泥臭い場合があるので、ていねいに水洗いしてあげよう。
料理方法としては、唐揚げ（写真）や天ぷらが定番。殻が軟らかいのでそのまま食べることができる。また、ソテーや汁物なども試してみよう！
＊監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
＊編集協力 加藤康一（フリーホイール）／小久保領子／大山俊治／西出治樹
＊魚体イラスト 小倉隆典
＊仕掛け図版 西野編集工房
＊参考文献 『週刊 日本の魚釣り』（アシェットコレクションズ・ジャパン）／『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』（東海大学出版会）／『日本の海水魚』（山と渓谷社）／『海釣り仕掛け大全』（つり人社）／『釣魚料理の極意』（つり人社）
