●磯遊びの魅力
夏、釣りの合間に手軽に楽しめる遊びで、子供たちが一番やりたがるのは、もうダントツに〝磯遊び〟である。服がびしょ濡れになるのもかまわず、潮だまりや磯の浅瀬を縦横無尽に遊び回る。子供って、無邪気でいいなあ……。
しかし実際には、それを眺めていたお母さんも一緒になって磯遊びに夢中になり、さらには釣りに熱中していたはずのお父さんも、いつのまにやら子供の箱メガネを奪い取って潮だまりでジャブジャブやることになる。予想もつかない発見や驚きを体験できる磯遊びは、現代人の遠い記憶を目覚めさせてくれるアウトドアレジャーの真打ちだったのだ!
●小さな潮だまりでも、無数の生き物が見つかるぞ!
磯遊びに適した場所は、内湾に面した静かな「小磯」。それも、潮だまり(タイドプール)があるような場所なら最高だ。ほんの小さな洗面器ほどの潮だまりにも、無数の生き物を発見してビックリすることだろう。また、潮だまりがなくても、磯ぎわの浅瀬に転がっている小さな石をひっくり返すだけで、さまざまな生き物と対面できる。カニやウニ、ヒトデなど比較的ポピュラーなものから、得体の知れない生命体?まで、驚きと発見の連続になること間違いなしだ(観察が終わったら、そっと元通りに直してあげよう)。
●磯遊びの道具
磯で遊ぶ場合、あれこれと道具を持ち込まないほうが自由に歩き回れて楽しい。しかし、徐々に磯遊びに慣れてくると、どうしても欲しいものが出てくるも。その双璧が「箱メガネ」と「手網」だ。箱メガネを使うと、海の中がまるで水族館のようにクッキリと見えるようになるし、何かの生き物を捕まえるには手頃な網があると絶対に楽しめる。
なお、平穏に見える小磯でも、突然のうねりが押し寄せたり、浮き石に乗れば滑ったり転倒する危険もある。さらには、ウニやクラゲなどに刺されて痛い思いをすることだってあるだろう。慎重になりすぎるのもつまらないが、ぐれぐれも最低限の危機管理は忘れないようにしたい。当然、ライフジャケット(救命胴衣)や滑りにくいマリンシューズなども必着だ!
●磯遊びを楽しむためのコツ
【小石をひっくり返してみる】
「磯遊びって、何をやればいいんだ?」とか言っている人は、とりあえず、磯ぎわに転がっている小石をひっくり返してみることをオススメする。その下側には、カニやウニ、ヤドカリ、ウミウシ、イソギンチャクなど、無数の生き物が息づいている。この小さな感激から、磯遊びは始まるのだ!
【じっと3分間待つ】
潮溜まりや小磯の浅場に潜む生き物たちは、意外とデリケート。人間が近寄ると、すぐさま岩陰に身を隠してしまう。しかし、ここであきらめずに3〜5分ほどじっと待っていると、そのうち生き物たちがワンサカと顔を出してくれる。
「こんなにいたの!」と、ビックリすること間違いなしだ。
【実際に触ってみる】
磯の生き物たちは、観察するだけでも楽しいが、それを実際に採取して手で触ってみるとまた別の発見がある。手の中でうごめくヒトデ、何とも言えぬ触感のナマコ、触ると紫色の液体を出すアメフラシ(写真)、意外とすばしっこいヤドカリ……。図鑑や水族館で見るだけでは絶対にわからないことを、だれしも簡単に体感できるのが磯遊びなのだ。
●用心したい危険な生き物
楽しいはずの磯遊びだが、うかつに触ると激痛を感じたり、ときには生命の危険さえある生き物もいることを覚えておきたい。もしも刺されてしまったら、すぐに最寄りの病院にかかりたい。
ゴンズイ/岩礁帯やタイドプールなどで見られる魚。ヒレに毒針を持ち、刺されると3日は痛い思いをする。死骸でも毒があるので注意!
ガンガゼ/ウニの一種で長いトゲの先端に毒腺がある。刺されると猛烈に痛く、呼吸困難を起こすこともあるので、絶対に触らないようにしたい。
ハオコゼ/岩礁帯に生息する小魚。見た目は可愛いが、ヒレには強烈な毒針を持つため、絶対に触らないようにしたい
アカエイ/普段は写真のように砂地に隠れているため気づきにくいが、うっかり踏みつけてしまうと尾びれの付け根にある毒針に刺されてしまう。刺されたら、すぐに病院に駆けつけよう。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)