ビギナーが釣りを始めるには、竿や仕掛け、エサなどをはじめとしてさまざまな道具を用意しなければならない。しかし、ここで提案するのは、竿やエサを現地調達する痛快な釣り。しかも、食べておいしい魚が比較的簡単に釣れるから笑いが止まらない。名付けて、“チョイ釣り”大作戦だ!
チョイ釣り

- 分 類-
- 学 名-
- 英 名-
- 別 名-
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
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●チョイ釣りで釣れる魚たち
チョイ釣りのメインターゲットは、ムラソイやカサゴといった美味な高級魚たち。ほかに、ベラやハゼの仲間などが釣れることも多い。岩の間に落とし込んだエサに、突然「ガバッ!」と魚が飛び出してくる瞬間は、予想以上に興奮させてくれるだろう。

ムラソイ
チョイ釣りのメインターゲット。とてもアグレッシブな性格で目の前に落ちてきたエサに対して、瞬時に飛びついてくる

カサゴ
ムラソイよりもやや深場にいることが多いが、活性が高まるとヒザ下の水深でも釣れてくる。ムラソイ同様に美味な魚だ。
●チョイ釣りが楽しめる場所と季節

チョイ釣りは、水深が20センチ程度の浅いゴロタ場(サッカーボールぐらいの大きさの石がゴロゴロしている海岸のこと)で楽しむことができる。足首ほどの水深でも十分に釣れるので、間違って海に落ちても靴が濡れるだけで済む。これなら親子でも安心して楽しめるし、釣りに飽きたらそのまま磯遊びに突入してしまうのも一興だろう。
季節的には、素足でも寒さを感じない初夏〜秋の暖かな時期が釣りやすい。このシーズンなら魚たちの活性も高いため、数釣りを楽しめることも珍しくない。
なお、水深がヒザよりも深い場所や高い波が寄せるゴロタ場は危険なので近づかないこと。また、念のためライフジャケットと滑りにくいマリンシューズなどを着用して楽しみたい。
●チョイ釣りに使う道具は、たったのコレだけ!

【ハリとオモリ】
チョイ釣りの仕掛け作りに使うパーツは、ハリとオモリだけ。ハリの種類は何でもいいが、どこの釣具店でも入手しやすい「袖バリ」と呼ばれるタイプでよい。サイズ(ハリの大きさ)は7号か8号が目安。ハリに糸を結ぶのは少々コツが必要なので、長さ45㎝程度の糸(ハリスと呼ぶ)が結んであるパッケージを購入するとよい。これなら、小学生でも現地で簡単に仕掛けを作ることができるのだ。
オモリは、「ガン玉」と呼ばれる小粒状のタイプがオススメ。いろいろなサイズ(重さ)があるので、ここでは「3B」か「4B」と呼ばれるサイズを入手すればよい。写真のように、数種類のサイズがセットになっているものが売られているので、これを選ぶのもいいだろう。

【小型ナイフ、またはカッター&ハサミ】
チョイ釣りのコンセプトは、できるだけお金をかけずに楽しむこと。なので、仕掛け作りや竿作り、エサの採取はすべて現場で行なう。そこで、ぜひ持参したいのが小型のナイフ。ハサミやノコギリなどがセットになった五徳タイプなら、これだけですべての作業をこなせるし、もちろん魚をさばくのにも役立つ。使い方を間違えば危険なツールではあるが、普段、刃物を使わない暮らしを過ごす子供に、野生力を培わせるチャンスでもある。
とはいえ、「ナイフはちょっと怖い」という人もいるだろう。その場合は、文房具用のカッターナイフとハサミの組み合わせでも十分に活躍してくれる。
●竿は海岸で拾える「棒」でOK!

チョイ釣りに使う竿は、長さ1m程度の「棒」でよい。海岸に到着したら、さっそく手頃な棒切れを探してみよう。理想を言えば、手元が直径1センチぐらいで先端に向かって細くなっている竹が見つかればベスト。枝付きの竹だったら、素性のいい部分を五徳ナイフのノコギリで1〜1.5メートルほどの長さにカットし、ナイフで枝を払えばあっという間にチョイ釣り竿の完成だ。
●仕掛けの作り方

【竿先に糸を結ぶ】
チョイ釣りの仕掛けの作り方は、超簡単。まず、竿の先端にハリの付いている糸(ハリスと呼ぶ)を結ぶ。結び方は何でもいいが、慣れないうちは普通の固結びを2回やればよい。慣れてきたら、チチワ結び(リンク)にしてから、さらに矢印のように掛け結びにしておくと解けにくくなる。糸の全体の長さは、30〜40センチぐらいが目安。

【糸にオモリを付ける】
続いて、糸にオモリ(ガン玉)を装着する。その方法は、オモリの割れ目にラインを挟んで、指先か歯の力でギュッ!と締め付けるだけ。オモリの位置は、ハリから5センチほど離れた場所が目安だ。
●エサはヤドカリや小貝を現地調達!

釣りのエサ選びで一番大切なことは、「魚が食べたがっているエサ」を使うこと。当然、現地で採集できるエサは、魚も普段から食べ慣れているだけに最高のごちそうになる。チョイ釣りでも、ゴロタ石をひっくり返して見つけられる貝の身を使ってみよう。エサを自分で探すことによって、魚が普段どんなエサをどんなエリアで捕食しているのかも分かってくるのだ。

貝の種類は、小粒の巻き貝やヤドカリといった漁業権に抵触しない小さな雑貝がよい。貝をハリ掛けするときは、石で貝殻を軽くたたきつぶして、割れた殻ごと身をハリに刺す。
●実際の釣り方

【足元の浅場を狙う】
チョイ釣りで間違えやすいのが、何となく深い場所を狙ってしまうこと。確かに水深のあるほうが魚は多そうに見えるが、実際には食い気満々の魚ほど水深の浅い場所に潜んでいるのだ。したがって、チョイ釣りでは、魚が潜んでいそうな足元の石の陰に静かにエサを落としてやるのが基本になる。これだけで、そこに魚がいれば一発で食ってくるはず。逆に、エサを送り込んでもアタリがない場合は、そこには魚がいないと考えてどんどん別の場所を探っていこう。

【反応があったら、素早く竿を立てる】
ムラソイやカサゴなどは、目の前にエサが落ちてくると速攻で食いついて巣穴に戻ろうとする。このとき、モタモタしていると巣穴に張り付かれてしまうので、グングンと竿先が引き込まれたら、すぐに竿を立てて引き抜きたい。もしも巣穴に潜られてしまったら、上の石を引っ繰り返してみよう。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)