◆モクズガニ、磯ガニ
昭和の時代、子供たちの代表的な遊びに「ザリガニ釣り」があった。ご存知の方も多いと思うが、長さ1mほどの竹の切れっ端などを竿にして、竿先からタコ糸を垂らし、その先端に煮干しや干しイカを結びつける。これをザリガニが潜んでいそうな水辺に落とし込んで釣り上げるという、釣りの原点のような遊びだ。
現在では、こんな釣り遊びを楽しむ子供は激減してしまったが、そもそもザリガニが生息している場所が激減していることも事実。そこで提案したいのが、このザリガニ釣りのテクニックを応用して楽しむ、海辺での「カニ釣り」だ!
●海辺で釣れるカニの種類
【モクズガニ】
モクズガニは全国各地に分布しているカニで、毛の生えたハサミ腕を広げると30センチ近くになる大物もいる。主に河川の中〜下流域に棲息していて、秋になると成長した個体が繁殖のために海に下ってくる。この海にいるモクズガニが、ここでのターゲットだ。モクズガニは上海ガニの仲間だけあって、その食味は極上。
なお、海でのモクズガニ釣りは誰でも楽しめるが、河川内では遊漁証が必要な場合があるので、必ず最寄りの漁協で確認しておきたい。
【磯ガニ】
正しくはイソガニやヒライソガニ、イワガニなどで、堤防の捨て石帯やゴロタ場などで普通に見かけるカニの仲間たちだ。クロダイ釣りのエサとして知られているが、味噌汁の具にするといいダシが出て美味。
【ショウジンガニ】
これも堤防やゴロタ場などでよく見かける種類。磯ガニよりも大きめで、味はとてもおいしい。
●カニ釣りが楽しめる場所
釣り場となるのは、河口の捨て石帯や小磯の潮だまり、ゴロタ場など。水深は足首ほどの浅場で十分に釣りになる。冬はカニも姿を消してしまうので、春〜秋の遊びと考えよう。なお、荒天時の釣りは危険なので、波やウネリのない日に楽しんでみたい。
●カニ釣りの仕掛け
竿は長さ1mぐらいの竹の棒で、その先端にハリを結んだイトを結びつける。ハリはカニの口に掛けるためのものではなく、仕掛けにエサを簡単に付けるためのものなので、種類はなんでもよい。サイズ的には、丸セイゴと呼ばれるハリの場合で10号程度が目安になる。ハリに糸(ハリスと呼ぶ)を結ぶのは面倒なので、最初からハリスが結んであるパッケージを入手するといいだろう。
●エサの種類
ザリガニ釣りでは煮干しやイカなどがエサになるが、カニ釣りでは現地調達できる小粒のヤドカリやカメノテなどを使えば良い。ハリに付けるときは、小石で殻を叩き潰して、そのままハリを刺せばOKだ。
●実際の釣り方
日中のカニは岩陰などに隠れているので、その近くにエサを投入して誘き出す。カニがエサに抱きついたら、じっくりと食べさせるのがコツだ。大きめのエサを使っていると2〜3匹のカニがエサを奪い合ったりするが、あわてずゆっくりと竿を上げてみよう。カニがエサを離さないことを確認したら、そのままゆっくりと釣り上げてバケツの中に落とし込めばOKだ。
途中でカニがエサを離してしまっても、再度、エサを目の前に落としてやると再び食ってくる。カニとの頭脳戦をたっぷり楽しもう!
●カニの料理方法
モクズガニの料理方法としては、ゆでガニ(写真上)が手軽でおいしいが、お勧めはカニ汁(写真下)。まず、生かして持ち帰ったモクズガニをブツ切りにし、水と一緒にミキサーにかけてザルか布でこす。このドロドロの液体を鍋に入れて火を通し、醤油か味噌を入れてカニのエキスがふんわりと固まってくれば、極上のカニ汁が完成だ。
一方、磯ガニの味も結構いける。簡単なのはサラダ油で唐揚げにする方法だが、軽く塩を振って食べるとパリパリと香ばしく、いい酒のつまみになる。味噌汁の具にしても上品なダシが出ておいしい。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)