安価に近場で短時間に楽しめる「安・近・短」の釣りのひとつに、身近な都市河川での釣りがある。なかでも手軽に大物釣りを体験できることで人気なのが、「コイのパンプカ釣り」だ。
パンプカ釣りというのは、水面に浮かべた仕掛けをゆっくりと流しながら、付けエサの食パンをコイに食いつかせるというユニークな釣り方。比較的シンプルな装備と仕掛けで強烈なファイトを楽しめるので、一度体験すると病み付きになる釣りだ!
コイのパンプカ釣り

- 分 類-
- 学 名-
- 英 名-
- 別 名-
釣りシーズン ベストシーズン 釣れる
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
●パンプカ釣りが楽しめるフィールドと季節

この釣りは、コイが水面を流れる食パンに反応してくれる釣り場で成立する。しかし、水底にエサの多い釣り場では、コイもなかなか水面のエサを食べようとしないので、こうしたフィールドはパンプカ釣りには不向きだ。お勧めなのは、都市部や市街地を流れている「都市河川」。放流されたコイが多いものの、日頃から水面を流れる有機物を捕食しているので、食パンへの反応も非常にいいのだ。
また、釣りが可能な公園の池も有望な釣り場。ただし、公園ではリール竿の使用が禁止されていることが多いので、事前に確認しておきたい。フナや小物釣りを楽しんでいる人がいる場所では、場を荒らさないように注意しよう。
季節的には一年中楽しめる釣りだが、コイも人間も快適に過ごせる春と秋の釣りをお勧めする。
●パンプカ釣りで使用する道具

【竿】
コイのファイトは強烈なので、竿も強いものを使うと思われるかも知れない。しかし、ことパンプカ釣りに限って言えば、仕掛けの操作性を優先して、軽量な竿を使ったほうが楽しめる。具体的には、長さ1.8〜2.4m程度のルアー竿や万能竿で十分だ。釣り場によっては長い竿が有利になる場面もあり、長さ5mを超える磯竿などを使う人もいるが、初心者には扱いにくくなる。
リールは小〜中型のスピニングタイプをセットし、ミチイトとしてナイロンの3〜4号を100mほど巻いておく。コイに走られたときに備えて、リールのラインを強く手で引っ張った時に少しずつ出るようにドラグを調整しておこう。

【玉網】
寄せてきたコイを取り込むときに必要。網の直径は45センチ以上は欲しいところだ。柄の長さは釣り場の状況に応じて2〜4mを使い分けるのが理想。
●パンプカ釣りの仕掛け

仕掛けは自作も可能だが、専用のものが市販されているので、最初はそれを利用するのが簡単だ。
市販仕掛けは、ウキとなるフロート材に短いハリスを介してハリを結んだもの。実際に使うときは、ミチイトの先端にクリンチノットなどで結ぶだけだ。この仕掛けを使うことで軽量な食パンでも投げやすくなり、かつ、コイに違和感を与えずにパンを食わせることができる。
●使用するエサ

付けエサ、撒きエサともに、食パンを使用する。種類は問わないが、付けエサ用には厚みのある6枚切りタイプを使うとよい。
ハリに付けるときは、食パンを2〜3センチ角程度にカットし、耳が付いた部分を使うとエサ落ちしにくい。パンの角にハリを刺し抜き、さらにハリを180度回転させてハリ先をパンの中に埋めるのがハリ付けの基本だ。2本バリ仕掛けの場合は、それぞれのハリにパンを付ければよい。


●釣りの準備


パンプカ釣りでは、コイの姿を確認してから、撒きエサで食い気をアップさせることが大切になる。
釣り場に到着してコイの姿を発見したら、まずはその上流側にパンを撒いて反応を見てみよう。撒きエサは、食パンを2センチ角ほどに切ったものを使えば良い。一度に大量に撒いてしまうと、パンとともにコイが下流に移動してしまうので、コイの動きを見ながら少量ずつ断続的に撒くのがコツだ。
食パン一枚分を撒いてもコイが反応しない場合は、その場所をあきらめて別の釣り場をチェックしてみたい。逆に、コイが撒きエサに食ってくるようなら、釣れる可能性は限りなくアップする。さっそく、釣りを開始しよう!
●実際の釣り方

【仕掛けの投入と流し方】
コイは意外とデリケートな性格で、不自然な人影や物音がするとすぐに逃げてしまう。実際に釣りをするときは、できるだけコイを驚かせないようにすることが大切だ。
コイがエサを捕食している地点がわかったら、その上流側に自分が移動して、そこから仕掛けを静かに投入する。仕掛けが自然に流れるように、適宜ミチイトを繰り出しながらコイの居場所まで流してやろう。このとき、ミチイトが緩みすぎるとアワセが利きにくくなり、逆にミチイトを張りすぎても仕掛けの動きが不自然になってしまう。張らず緩めずのテンションで流していくことが大切だ。
仕掛けがポイントに近づいてきたら、いつ食ってきてもいいように心の準備をしよう。コイがエサを食うと水面に波紋ができるので、それを合図に仕掛け(フロート)が完全に水没するのを待ってから確実に竿を立ててアワセを入れる。早アワセしてしまうと、すっぽ抜けの確率が高くなるので要注意だ。

【大物とのやり取りの方法】
うまくコイがハリ掛かりしたら、竿をしっかりと立てた状態でじっくりと応戦しよう。強烈な引きでコイに走られても、前述したようにリールのドラグをしっかり調整していれば、少しずつラインが出てくれるので切られる心配は少ない。リールが巻ける状態であればジワジワとラインを巻き取り、逆に走られたら巻取りを止めてじっくりと耐える。これを繰り返していくうちに、徐々にコイの体力が消耗してくるわけだ。
何度かの攻防の末にコイが足元まで寄ってきたら、慎重に玉網ですくい取ればよい。手前に浅瀬がある場合は、そこにズリ上げる方法でもよいだろう。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)