近年、大人気のワカサギ釣り。その人気を牽引するのが 「ドーム船」だ。極寒の季節でもポカポカの室内でワカサギ釣りを楽しめることから、シーズンになるとビギナーからベテランまで多くのファンで賑わう。ここでは、ドーム船でのワカサギ釣りの魅力とそのノウハウを紹介していこう!
ドーム船のワカサギ釣り

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●ワカサギという魚について

ワカサギは全国各地の湖沼に生息する体長5〜12センチほどの小魚で、初心者でも比較的容易に釣れるのが魅力だ。ドーム船のほか、ボートや氷上、桟橋での釣りも人気となっている。また、ワカサギは料理の下ごしらえが簡単で、天ぷらやフライ、マリネなどで美味なこともうれしい。
●ドーム船のワカサギ釣りの魅力

ドーム船というのは、ボートの上にドーム型の部屋を乗せたもので、丈夫な屋根や壁をもつ屋形船のようなタイプもある。そして、このドーム船にはさまざまなメリットがある。
まず、第一に挙げられるのが、前述したように真冬でも暖かな室内でくつろぎながらワカサギ釣りを楽しめること。一般にワカサギ釣りの好シーズンは秋〜初春の寒い時期だが、ドーム船なら室内は外の冷気と遮断され、暖房設備も完備しているので、つねに室温はポカポカ状態。たとえ、外で雪が降ったり、冷たい風が吹いても、ドームの室内なら薄着の軽快なスタイルで釣りを楽しめるのだ。30人以上乗船できるような大型のドーム船は安定感があって、多少の風でも揺れにくいこともうれしい。
また、通常のボート釣りだと、ポイント(よく釣れる場所のこと)の選択は基本的に個人の判断に委ねられる。ポイント選びは釣果を大きく左右する要素なので、釣れる釣れないは自分次第というわけだ。しかし、ドーム船では船長が釣れるポイントまで案内してくれるし、ボート店によっては道具の使い方からエサの付け方、釣り方までを親切にアドバイスしてくれるので、初心者でも手堅く釣果を得ることができる。
さらに、室内設備の充実もドーム船ならでは。最新式の大型船では、男女別の清潔なトイレや手洗いなどを完備していたり、湯沸かしポットや電子レンジなども備えているので、温かい飲み物や軽食などを自由に摂ることができる。
そして、多くのドーム船ではレンタルのタックル(竿やリールなど)も用意していて、ボート店によっては人気の電動リール竿を借りることも可能だ。その湖で実績の高い仕掛けやエサも購入できる。釣ったワカサギは、発泡スチロール箱で持ち帰ることもできるし、その場で天ぷらにして食べられるサービスを行っているところもあるので、ファミリーや仲間同士の旅行に組み込めば最高の想い出になることだろう。
●ドーム船が利用できる湖

現在、国内でドーム船を営業している湖は、山梨県の山中湖、長野県の諏訪湖や野尻湖、福島県の桧原湖、神奈川県の相模湖、岩手県の岩洞湖など。いずれも営業期間は秋〜春で、山中湖などではゴールデンウイークまで楽しめる。また、湖面が結氷する時期には、そのまま氷上ドーム船として営業する湖もある。
ドーム船のタイプは、40人以上が乗れる大型船から定員10人程度の小型船、2〜3人乗りのミニタイプまでさまざま。室内の釣り座の正面の床に開けられた穴から水面がのぞいており、そこから仕掛けを下ろして釣りをする仕組みだ。
●ドーム船の利用方法

ドーム船を利用する場合、まずは行きたい湖のボート店に連絡して、希望日の予約をするのが基本。休日はかなり混雑するので、早めにコンタクトを取るのが無難だ。
予約当日は、ドーム船の出港に合わせて早めに現地に到着して受付を済ませたい。そのとき、必要に応じて仕掛けやエサなどを購入し、直近の釣果状況や釣れる時間帯、タナ(ワカサギが釣れる水深のこと)、帰りの時間なども確認しておこう。
湖畔の桟橋からドーム船に直接乗り込んで出発する場合は、時間に余裕をもって行動して忘れ物などを防ぎたい。ドーム船が出港した後で現地に到着した場合は、すでにポイントに浮かんでいるドーム船まで小型モーターボートで送ってくれるので、受付のスタッフの指示に従おう。
ドーム船に乗り込んだら、自分の釣り座を確保して釣りの準備を整える。その間、船長が魚探の反応をチェックしながら、もっともワカサギの群れが多いポイントでドーム船をアンカー(イカリ)で固定してくれる。その作業の間に、竿や仕掛けの準備を整えよう。
帰りの時間は、ドーム船の定時帰港だけではなく、好きな時間に送迎ボートで桟橋まで送り届けてくれるので、適宜船長に相談すればよい。なお、船内では喫煙や飲酒の禁止などの基本的なルールを遵守して楽しもう。
●使用する竿とリールの種類

【電動リール竿】
近年のワカサギ釣りで使う竿の主流は「電動リール竿」で、ドーム船でも多くの人がこの竿で楽しんでいる。
電動リール竿は、電動パワーで仕掛けを巻き上げてくれるので仕掛けの上げ下げが非常に楽になり、手返しも早くなることがメリットだ。近年では価格的もこなれてきて、実売価格1万円台で買うことができる(前述のように、ドーム船ではレンタルも可能)。
使用するラインはPEと呼ばれる種類で、太さは0.3号が標準。ワカサギ専用のものが視認性にも優れているのでお勧めだ。長さは30mほど巻いておけばよい。
電動リールにセットする竿(穂先)は、メーカーの純正品を使うのが基本だが、差し込み口の直径が同じなら他のメーカー品でも使い回しができる。長さは、20〜30センチ程度のものが使いやすい。竿の調子(硬さのこと)は標準的なタイプでいいだろう。

【手巻きリール竿】
電動よりも操作がシンプルで、初心者でもマイペースで扱えるのが手巻きリールのメリット。とくに、水深の浅い湖では利用価値大だ。一番左のタイプは電動リール竿の穂先との互換性を考慮しているので、手巻きと電動、どちらのリールにも穂先を差し込んで使える。
リールは、ワカサギ用の小型両軸タイプをセット。これに巻くラインは、ナイロンの0.6〜0.8号程度が扱いやすい。
●あると便利なアイテム

エサ箱/サシなどの動きのいいエサを使う場合、エサ箱が必需品となる。写真のような広口のタイプなら、エサを取り出しやすくて便利。

ハサミ、ピンセット/食い渋り時などにサシをカットするために、よく切れる小型のハサミを用意したい。また、細々したパーツ類を扱うにはピンセットもあると便利。

小物入れ/オモリや金属環、替えバリ(ハリス)などは小物ケースに収納しておくと、仕掛けの交換などがスムーズに行える。

クーラーボックス/釣れたワカサギは水を半分入れたバケツに泳がせておけばいいが、ある程度の匹数がまとまるごとに冷えたクーラーに移し替えると鮮度を保てる。
●ドーム船の釣りで使用する基本仕掛け


仕掛けについては、市販の完成品がクオリティも高く問題なく使える。ドーム船でもさまざまな市販仕掛けが使われているが、一般的にはハリ数が5〜6本程度で、全長0.8〜1.2m程度の仕掛けが使いやすい。予備も含めて3〜4組用意しておこう。
ハリのサイズは、釣れるワカサギの大きさに応じて使い分けるのが理想。また、ハリの形状も「袖」「キツネ」などがある。こだわるとキリがないが、ドーム船では実績のある仕掛けを販売しているので、初心者はそれを使うのがいいだろう。
仕掛けの下に付けるオモリは、0.5〜2.5号までを用意したい。
●使用するエサの種類

紅サシ/白サシを食紅で赤く染めたもので、ドーム船にかかわらずワカサギ釣りの定番エサとなっている。エサ持ちがよいため手返しのいい釣りが展開できる。状況によってカットして使えるのもメリットだ。半日で1〜2袋使用する。

アカムシ/普段、ワカサギが常食しているエサなので、ワカサギの活性に関係なく食いがいい。とくに低活性時には効果的だ。ただし、ベニサシと比べてエサ持ちが悪いためマメな交換が必要になる。半日で200円分あれば十分。
●釣り座のセッティング

ドーム船に限らないが、ワカサギのような数釣りを楽しむスタイルでは、「釣り座のレイアウト」が大切になる。自分が使いやすい環境を調えることで釣りが快適になり、数釣りにも繋がるためだ。
まず、自分の釣り座を決めたら、リール竿やエサ箱を置くための台を正面に置く。ハサミや小物類もここに置くといいだろう。釣れたワカサギは、とりあえず水を張ったバケツに入れて活かしておくが、これは魚の口からハリを外す場所の近くに置いておくと手返しがスムーズになる。クーラーボックスや手ふきタオルなどは、じゃまにならない場所に置けばよい。これらのレイアウトが整ったら、リール竿に仕掛けをセットして釣りの開始となる。
●エサのハリ掛け方法

ベニサシは、尻の部分をチョン掛けにしてハリ先を出すのが基本。

食い渋り時にはハサミで胴体をカットして体液を出すと食いを促すことができる。
●実際の釣りの流れ

1 仕掛けの絡みに注意して水面に落としたら、リールのスプールをフリーにして仕掛けを下ろす。着底後、クラッチを入れて余分なイトフケを取る。

2 ミチイトをリールスプールのストッパーに引っ掛けておけば、次回以降の投入時に、仕掛けが着底したときに余分なイトフケが出なくなる。これは電動リールでも手動リールでも同様だ。

3 着底した位置で仕掛けを落ち着かせたら、そこでアタリを待つのが基本。竿(リール)は手持ちの状態で、なんらかの反応があれば即座にアワセを入れていこう。

4 ワカサギは動くエサに興味を示すので、なかなかアタリが出ないときには竿先を上下に動かして誘いを入れるのも効果的だ。

5 アタリで多いのは竿先を「ブルブルッ!」と押さえ込むパターン。じわりと押さえることもある。また、竿先がなんとなく重くなるだけのアタリも多いので、迷ったときにはとにかくアワセを入れてみよう。

6 アワセは、竿(リール)の角度をキープしたまま上方に素早く持ち上げる。これなら、軟らかい穂先でもアワセの動作がダイレクトに仕掛けに伝わる。

7 魚がハリ掛かりしたらスムーズに仕掛けを巻き上げ、取り込んだ魚をバケツに入れる。ラインを張った状態で作業すると、無用な絡みを防げる。

8 ハリがワカサギの上アゴに掛かっている場合は、親指と人差し指でハリ上のハリスをしっかりと持ち、そのまま中指でワカサギの頭を横から強く押しつけるとハリが外れる。硬い下アゴに掛かった場合は、両手を使って外そう。

9 バケツの中の魚が増えてきたら、適宜、冷えたクーラーボックスに移して鮮度を保つ。写真のようなザルがあれば、素早く水気を切れて便利だ。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)