●海の恵みを実感できる「塩作り」
醤油、味噌、酢、ミリン、砂糖、塩……。いずれも、日本の家庭料理には欠かせない調味料である。そして、これらの中で、人間にとって絶対に欠かせないのが〝塩〟だ。
現在、日本ではさまざまな塩が製造されているが、昔ながらの方法で海水から作られた塩には、カリウム、マグネシウム、カルシウムのほか、微量元素として亜鉛、鉄、ヨウ素、マンガンなど70種類以上のミネラル分が含まれている。その成分は海水そのもので、人間の体の中に流れている体液や血液、そして、母親の羊水の成分と同じ組成を持っている。医療に使うリンゲル液も同じ成分だ。海は人間の生命の源であり、生命維持に必要なミネラルを適度に含んだ自然塩を摂取することは、人間にとって自然な考え方だろう。
そこで、海に親しむための手段のひとつとして提案するのが、海の水から塩を作る遊びだ。遊びと言っても、できあがった塩は本当においしい。ぜひ、親子で海の恵みを実感してみてはいかがだろう。
●自然塩をおいしく作るためのコツ
現在、自然塩を作っている各地の施設では、ポンプで汲み上げた海水を地上高く立ち上げたネットの上からゆっくり滴り落とし、風と太陽の力で濃縮。それをあらためて天日で干したり、直径3mほどの大釜で煮ているケースが多い。しかし、こんなに大がかりでなくても、もっと簡単に塩は作れる。以下、その流れを見ていこう!
●塩の作り方
1 まず、できるだけきれいな海水をくむ。これは、外海に面した潮通しのいい堤防の先端などから、ロープをつけたバケツでくむとよい。海水の塩分濃度は約3.4%なので、とりあえず5リットルの海水があれば100グラム以上の塩が作れる。なお、塩作りに適した季節は海の水が澄む冬期とされるが、少量の塩を作るだけならそれほどこだわる必要はないだろう。
2 くんできた海水をそのまま煮てもいいが、念のため、目に見えない不純物をこしておこう。コーヒー用や天ぷら油用のフィルターが便利。
3 家にある一番大きな鍋に海水を入れ、強火で蒸発させていく。海水が減ったら適宜つぎ足し、合計5リットル分の海水が、500ccぐらいに減るまで煮る。
4 海水が煮詰まってくると白く濁ってくる。これは硫酸カルシウム(石膏)の結晶で、多少のエグ味がある。味を重視するならフィルターでこしておきたい。
5 小鍋に海水を移し替え、さらに煮詰めていく。ここまでくると、どんどん塩の結晶ができてワクワクする。強火のままだと熱い塩が飛び散ることがあるので、終盤は弱火でコトコトと煮るのがコツ。
6 水分が多少残っている状態で火を止める。この段階で残っている液体はニガリ(非常に苦い)なので、完全に煮詰めてしまうと塩が苦くなったり、ミネラル分の結晶が鍋に固着して取れなくなってしまう。残ったニガリを布などで絞り取れば、自然塩のできあがりだ。なお、ニガリは料理の隠し味に使ったり、豆腐作りなどに活用できる。
7 できた塩をさらに天日で干すと、サラサラになって料理に使いやすくなる。手作りの塩の味は、市販の塩よりも断然おいしいことをお約束する。
*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)