キンメダイ【金目鯛】

キンメダイ【金目鯛】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類キンメダイ目キンメダイ科キンメダイ属
  • 学 名Beryx splendens
  • 英 名Splendid alfonsino
  • 別 名キンメ、アカギ、マキン

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

310b7fbc 564d 47c4 981b 9f9d01e49c11

北海道・釧路沖以南、とくに茨城県沖以南の太平洋側の温暖な海に分布する。
同じキンメダイ属の魚としては、相模湾以南に分布しているフウセンキンメ、西日本以南に分布するナンヨウキンメなどがおり、鹿児島県奄美諸島近海では、これら3種すべての棲息が確認されている。
また、ギンメダイという魚もいるが、こちらは銀白色をしていて違う科に分類される。ただし、両種ともにキンメダイと呼ぶ地域もある。


特徴

C05500be 2834 4c1e 814e 4477e4ed2ee5

その名の通り、金色をした大きな眼を持つ。この特徴的な眼の輝きは、網膜の下にある「タペータム」と呼ばれるグアニン質の層が光を反射するときに見られるもの。暗い深海に棲息するキンメダイは、この眼でわずかな光を効率よく集めて物を見ることができる。
海は水深が深くなるにつれて太陽光が届かなくなり、水深200mでは昼間の太陽光が海面のおよそ0.001%まで減って漆黒の世界になる。そして、こうした深海に棲息する魚の多くは体色が赤いことが多く、実際、キンメダイの体色も鮮やかな濃朱赤色をしている。深海魚の体色が赤くなっている理由には諸説あるが、深海では赤い色ほど光を反射しにくく、外敵から見えにくくなるためという説が有力だ。ただし、キンメダイの場合、釣り上げてすぐは腹側がピンク色がかった銀白色の体色で、ある程度時間が経ってから鮮魚店でもよく見られるようなおなじみの赤みの濃い体色となる。
体形は側扁しており、頭部が大きい。各ヒレは鮮紅色をしており、大きな尾ビレは深く切れ込んでいる。
フウセンキンメはキンメダイに酷似しているが、後ろの鼻の穴がフウセンキンメは楕円であるのに対し、キンメダイは細長いスリット状であることで区別できる。また、キンメダイは体長が50㎝超まで成長するが、フウセンキンメは40㎝止まりなので、大型のものはキンメダイということになる。
また、ナンヨウキンメは、キンメダイよりも体高があり、目はさらに大きく、ウロコが粗い。


性質

水深200~800mの大陸棚の縁辺部や海山周辺のカケアガリになった岩礁域に棲息している。
主食はハダカイワシ類やヨコエソ類などの小魚、甲殻類、ゴカイ類などの動物性食。ホタルイカなども捕食している。
産卵期は6~9月頃で、地域によって多少の差がある。産卵数は30~50万粒で、分離浮遊卵は1粒ずつバラバラになって黒潮に乗って漂い、水温23℃で2日間で孵化する。稚魚は水深50m以浅に棲むが、成長するに従って深みへ落ちていく。
体長は1年で15㎝、2年で24㎝、3年で40㎝前後に成長し、4年ほどで産卵行動をするようになる。比較的長寿の魚で、15年ほど生きるとされる。
200mの深さに棲むキンメダイは、1㎠につき2㎏もの水圧を受けるとされるが、体が押しつぶされることがない。これはキンメダイの体が体液と肉と骨格のみでできており、体内に気体を持たないためである。


文化・歴史

B20c788f 89ee 48e9 8911 d5c73e5caeed

鮮やかな赤い体色が美しく、マダイの代わりに祝儀魚として用いている地方も多い。
主な産地は、房総半島、三浦半島、相模湾、伊豆半島、静岡県、高知県などとなっており、関西や日本海側ではややなじみの薄い魚である。
キンメダイは1億年前に出現した古い種の魚でありながら、深海から捕獲するには技術が必要なため、食用とされるようになったのは明治時代以降である。そして、一般に広く食べられるようになったのは、戦後になってからである。
また、キンメダイは太平洋、インド洋、大西洋など、ほぼ世界中の暖海域に棲息しており、さまざまな国で水揚げされたものが日本に冷凍輸入されている。


釣り方

キンメダイ釣りは、関東では房総半島と伊豆半島が2大拠点となっている。紀州沖や室戸岬沖など、西日本エリアにもキンメダイの好釣り場は点在しており、今後のエリアの開拓が期待される。
季節的には冬に狙う遊漁船が多いが、実際には盛夏を含めた一年中釣ることが可能だ。

【深海釣り】

7fe1df5d 045f 4ae9 afd2 ebcf32c41005

キンメダイは、基本的に水深数百m以深を狙う深海釣りで狙う。
使用タックル(竿、リール、糸を含む道具一式)や仕掛け(針、糸、金具などを組み合わせて作る部分)、オモリの重さなどは釣り場によってかなり異なる。下の仕掛け図は水深約250~400mで使う仕様で、オモリは200~300号が標準。狙いの水深が200~300mと比較的浅い場合は、使用オモリが150号前後となるためイカやアジ用のタックルが流用できる。逆に、水深300~500mの超深場ではオモリが約500号となり、リールも大型の電動リールが必須だ。
基本の狙いダナ(魚が泳いでいる層)は底層で、定期的に底立ちを取り直し(オモリを海底まで沈める)ながらアタリ(魚が食付いた信号)を待つ。ガクガクと竿先を震わせるシグナルが来たら、そのまま待つか少しずつ仕掛けを巻き上げたり、逆にミチイトを出しながら追い食いさせる。


料理

2f2e7969 a6a0 4e60 8bf8 7a8b691ba209

煮付け

C56caa62 b204 4e1d bf73 3d1d88691b9f

刺身

179f4583 95f1 40a0 aed7 97e247711db7

ブイヤベース

キンメダイは姿形の美しさはもちろん、食味もいいので市場では高級魚として扱われている。身は軟らかな白身で、小骨が少ないので子供や年配者にも喜ばれる。また、栄養価もとても高い魚だ。食味の旬は、脂の乗る冬とされる。
煮付けにするのが一般的だが、釣りたての新鮮なものは、刺身や寿司ネタにするのも美味。塩焼き、ムニエル、酒蒸し、粕漬け、味噌漬け、干物など、いずれもおいしくいただける。頭やカマなども脂の乗った身が付いていて、いいダシも出るので、しゃぶしゃぶなどの鍋物、アラ煮などに利用したい。
ブイヤベースは、鍋でタマネギ、ニンニクを炒めてぶつ切りにした身やアラを入れる。白ワイン、サフラン、トマト缶、塩・こしょうで味つけし、アサリを入れて口が開いたら完成だ。
なお、フウセンキンメは「トロキンメ」などと呼ばれ、キンメダイよりも脂ののりがいいとされる。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

ページTOPへ