イワシのサビキ釣り(入門者向け)

イワシのサビキ釣り(入門者向け)
  • 分 類ニシン目ニシン科マイワシ属
  • 学 名Sardinops melanostictus
  • 英 名Spotline sardine
  • 別 名ナナツボシ、キンタロウ、オオバ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

釣り方

海釣りの入門にオススメ!イワシのサビキ釣り

海釣りの入門にオススメとされるのが、堤防での小物釣り。その対象魚はさまざまだが、初心者が一番釣りやすい魚といえば、食卓でもおなじみの「イワシ」だ。イワシといえども一度に4〜5尾もハリ掛かりさせると、竿先が大きく引き込まれて強烈な引きを味わうことができる。これには子供はもちろん、大人だって興奮すること間違いなしだ。そして、釣ったイワシを鮮度よく家に持ち帰れば、どんな魚にも負けないおいしい料理が味わえることも嬉しいところ。
そんな魅力いっぱいのイワシを、堤防からのサビキ釣りで狙う方法をご紹介していこう!

サビキで釣れるイワシの種類

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ひとくちにイワシといっても、いくつかの種類がある。代表的なのは写真の「マイワシ」で、堤防では体長15センチ程度のものがよく釣れるが、状況によっては20センチ超の良型も狙える。「ウルメイワシ」はマイワシに似ているが、目が大きいので区別できる。体長は大きくなると20㎝を超えるので釣り味も最高だ。「カタクチイワシ」も堤防ではお馴染みの種類で、シコイワシやヘシコ、背黒(せぐろ)などとも呼ばれる。

イワシが釣れる堤防と季節

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イワシの仲間は全国各地に生息しているが、初心者には足場が良くてスペースが広い大規模港の堤防や岸壁での釣りがお勧めだ。とくに水深のある港なら、港内の奥までイワシが回遊してくるので比較的手軽に釣りを楽しめる。場所によっては、釣り場まで車が横付けできるし、近所にコンビニやファミレスなどがあれば、家族連れでも食事やトイレに困らないだろう。ただし、立ち入り禁止になっているかどうかの確認は忘れずに。
季節的には、水温が上昇してくる初夏〜晩秋くらいまでが好機。ただし、地域によっては真冬でもイワシが爆釣するケースがあるので、ウェブや釣り雑誌などで情報をチェックしてみよう!

使用する竿

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ノベ竿/ 足場の低い堤防で楽しむなら、ノベ竿が快適に使える。ノベ竿というのは、リールを使わないシンプルな竿の総称だ。主に淡水の釣りで使われる種類が多いが、堤防の釣りでも十分に使える。写真は、左が万能竿、右が渓流竿というタイプで、いずれも全長が4~5.3m程度の竿が使いやすい。

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リール竿/ 足場の高い堤防や海釣り施設などでは、ミチイトを出し入れできるリールをセットした竿が便利だ。こちらも万能竿と呼ばれる長さ3m程度のタイプが使いやすい(写真左)。また、足元狙いが可能な釣り場なら、長さ1.8mほどのルアー竿(写真右)を使うことによって、ノベ竿よりも快適な釣りが楽しめる。リールは、初心者でも扱いやすい「スピニング」と呼ばれるタイプをセット。ミチイトは、ナイロンの2号を釣具店で巻いてもらおう。リール竿/ 足場の高い堤防や海釣り施設などでは、ミチイトを出し入れできるリールをセットした竿が

用意したい道具類

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コマセバケツ/ サビキ釣りで使用するコマセ(寄せエサ)を入れておくためのバケツ。フタ付きのタイプが便利。

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スプーン、ヒシャク/ コマセカゴにコマセを詰めるために使用すると、手を汚さないですむ。ただし、魚の食いがいいときには、素手で直接コマセを詰めるほうが早い。

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水汲みバケツ、手ふきタオル/ コマセで汚れた手や釣り場を洗うための必需品。長さ5mほどのロープが付いたものを選ぼう。手を拭くためのタオルも用意しておきたい。

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クーラーボックス/ イワシは鮮度が落ちやすい魚なので、釣り上げたらすぐに水氷で冷やしたクーラーボックスに収納することが大切。容量は10〜16リットル程度でOKだ。

サビキ仕掛けの種類について

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この釣りに使用する「サビキ」というのは、ハリに装飾を施した擬餌バリのこと。これをひとつの仕掛けに5〜7本ほど連ねたものがサビキ仕掛けだ。
釣具店では、さまざまなバリエーションのサビキ仕掛けが売られているが、イワシ狙いでは「スキンサビキ」と呼ばれる種類を用意しておけばよい。ただし、その日の海の状況や天候、イワシの活性などによって、同じスキンサビキでもピンク色より白がよかったりと特定のサビキに食いが偏ることも少なくない。また、「魚皮サビキ」と呼ばれるタイプに食いがいいこともあるので、地元の釣具店に相談して選ぶのが確実だ。
ハリのサイズは、釣れるイワシの大きさに応じて4〜7号程度を使い分けよう。

仕掛け作りに使用するパーツ類

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コマセカゴ/ コマセを入れるためのカゴ(コマセ袋)は、仕掛けの上部にセットするタイプ(左)と下に付けるタイプ(中)が定番だ。深場を攻める釣り方では、沈下中のコマセの放出を制御しやすいプラカゴ(右)タイプもお勧め。

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オモリの種類とサイズ/ コマセカゴ(袋)をセットしたサビキ仕掛けの場合、オモリはナス型の3〜10号程度を水深によって使い分ける。潮の流れの速い釣り場では、15号前後の重いオモリが必要なこともある。

イワシのサビキ釣り仕掛け

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リール竿の場合、リールから出ているミチイトを竿のガイドに通してから、ミチイトの先端にエイトノットループでチチワを作る。そこに、市販のサビキ仕掛けとコマセカゴ、オモリをセットすれば仕掛けの完成だ。
ノベ竿の場合は、竿先にあるリリアンと呼ばれるヒモ状のパーツに、ナイロンラインの2号をチチワ結びでセットし、サビキ仕掛けを延ばしてセットした状態で、オモリがちょうど竿のグリップの末端の位置にくるように、ナイロンラインの長さを調整する。
なお、いずれの場合もイワシが表層を回遊しているときはコマセをヒシャクで撒けばよいので、コマセカゴは不要だ。

コマセエサの種類

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冷凍アミ/ 魚を寄せるためのコマセは、匂いが強く集魚効果に優れるアミエビをブロック状に冷凍したものを使用する。イワシ釣りの場合、半日で1kgのブロックが1〜2個あれば楽しめる。

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加工コマセ/ 冷凍ブロックは解凍する手間があるが、常温保存できる加工コマセなら、すぐに使えて便利。コマセ袋に入れて振り出すとすぐになくなってしまうものの、表層のイワシ狙いなら問題なく使える。

狙ってみたいポイント

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イワシは、基本的に潮通しのいい場所や潮に変化が発生しやすい場所に回遊してくる。堤防先端や曲がり角付近、港内の突堤などはとくに狙い目だ。ただし、あまりに潮が速い場所は、コマセがすぐに流れてしまって釣りにくい。その点、人気の釣り場でいつもコマセが効いているようなポイントなら、港内の奥まったような流れの少ない場所でも定期的な回遊が期待できる。
なお、イワシは堤防や岸壁の際に沿って回遊することも多いので、沖を狙ってアタリが出ないなら、むしろ堤防ぎわから一歩後退して足元を狙ってみることも大切だ。

実際の釣り方

大量のイワシが釣り場に回遊している場合は、単純にサビキ仕掛けを足元に落とし込むだけでも釣ることが可能だ。しかし、通常はコマセを定期的に効かせることでイワシの群れが活性化し、より釣りやすくなってくる。以下、その流れを写真で見ていこう。

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1 コマセ袋に、解凍したアミコマセを八分目ほど詰める。このとき、仕掛けを適度に張っておけば、ラインが絡まることなく作業しやすい。

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2 仕掛けを静かに海中に投入する。最初はイワシが回遊しやすい表層〜中層から探っていくのが基本だ。竿先を1〜2回ほど強めに振り上げてコマセを拡散させたら、仕掛けをコマセの煙幕と同じ位置にした状態でアタリを待つ。

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3 竿先にブルブルとアタリを感じたら、軽く竿を起こしてハリ掛かりさせる。イワシの群れが通過している時には、一度に数匹のイワシがハリ掛かりしてくるので、かなり強い引きを楽しめる。

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4 ハリ掛かりを確認したら、すみやかに仕掛けを上げて魚を取り込む。大物と強引にファイトするとハリスが切れることがあるが、あまりのんびりしていると仕掛けが絡んでしまうので注意。

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5 仕掛けが絡まないようにラインを張った状態で魚を外して、冷えたクーラーボックスに入れる。すべての魚を外したら、再びサビキカゴにコマセを充填し、1からの作業を繰り返す。

釣れないときの対策とヒント

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狙いのタナ(水深)を変える/ ほかの人と同じサビキを使っているのに自分だけダメな場合は、タナを変えて探ってみよう。狙いのタナがマッチしていれば、写真のようにイワシの上アゴにハリがガッチリと掛かってくる。釣れている人のタナを参考にしてみたい。

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サビキの種類を変える/ 誘い方やタナを変えても食わないときには、そこで初めてサビキを交換してみる。スキンから魚皮やフラッシャーなどのサビキに変えてみるほか、ハリのサイズを小さくしてみると効果的なことも多い。

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時合いが来るまで待つ/ 状況がよければ簡単に釣れるイワシだが、回遊魚だけに気ままな側面もある。いろいろ工夫をしても釣れないときは、回遊がくるまでじっくり待とう。潮の動きが変わった瞬間、爆釣が始まることも多い。


分類・分布

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一般にイワシといえば、ニシン科マイワシ属に分類される本種を指すことが多く、ウルメイワシはウルメ、カタクチイワシはセグロなどと呼んで区別することが多い。また、サビキ釣りなどでイワシ同様に釣れるトウゴロウイワシは、イワシの名は付いているが実際にはボラの仲間。姿形は似ているがウロコが硬く、イワシの仲間のようにはがれ落ちることはない。
本種は、オホーツク海から日本各地、東シナ海、南シナ海までの東アジアの沿岸域に広く分布している。


特徴

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背面部は暗青色、腹部は光沢のある銀白色。腹ビレが背ビレの真下に位置し、体側には黒い小斑点が縦1列、または2列に並んでいる。東北から関東にかけての別称「ナナツボシ」は、この斑点を指して呼ばれるものだ。基本的に、ほかのイワシとはこの斑点で見分けられるが、なかには斑点がまったくない個体もいる。
体形は細長く、腹部が側扁しており、断面は逆三角形に近い。下アゴが上アゴよりわずかに突き出ている。ウロコは薄い円鱗で、非常にはがれやすい。
成魚の体長は30㎝に達するものもいるが、20㎝程度までの個体が多い。生後1~2年で10~20㎝に成長し、寿命は5~8年程度とされている。
10㎝前後のものをコバ(小羽)、15㎝前後をチュウバ(中羽)、20㎝以上をオオバ(大羽)と呼び名が変わる出世魚でもある。


性質

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通常は、水深20~70mの上・中層を大群で回遊している。外洋に面した沿岸域を回遊することが多いが、潮通しがよければ内湾まで入ることもある。天敵は大型の回遊魚や海鳥などで、襲われた際には一斉に同調して泳ぎ、敵の攻撃をかわす。
春〜夏にかけては北上、秋〜冬には南下という季節的な大規模回遊を行うが、こうした回遊をせずに一定海域に留まっている群れもある。
産卵の時期は地域によって異なるが、南ほど早く12月〜7月頃まで。産卵は夕方から深夜、水深数十mの海中で行われ、4万〜12万粒という多数の卵を産む。しかし、大多数の卵がほかの動物に捕食され、成魚まで成長できるのはひと握りだ。受精卵は分離浮性卵で、海中を漂い2~3日で孵化する。稚魚のうちは橈脚(とうきゃく)類の幼生や卵をエサとしているが、成魚になると各種のプランクトンを捕食する。口とエラブタを大きく開けながら泳ぎ、鰓耙(さいは)でプランクトンを漉し取って捕食するのが特徴だ。


文化・歴史

紫式部が、高貴な人々が食べるものではない、とされながらも大のイワシ好きだったという逸話があるほど、昔から日本人の食卓を賑わしてきた魚だ。
日本の沿岸でのマイワシの漁獲高は,60~80年周期で減少と増加の波を示し、1965年には1万トンを割ったが、その後回復して1988年には450万トンとなった。しかし、その後はまた減少を続け、2008年の漁獲高は10万トンを割っている。
現在ではあまりみられなくなったが、節分の時期にはイワシの頭をヒイラギの小枝に刺して玄関に飾っておくと、鬼除けになるという風習がある。


料理

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刺身

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蒲焼き

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さつま揚げ

イワシは価格が安く、一年中出回るので、家庭料理ではおなじみの魚。DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸、ビタミンD、カルシウムなどを豊富に含むため、健康にいい食材としても評価されている。
また、「イワシは七度洗えばタイの味」といわれるように、鮮度よく持ち帰って清潔に下ごしらえすることができれば、タイの味に匹敵するといわれるほどの食味も楽しめる。
料理方法はバラエティに富み、刺身、酢漬け、塩焼き、煮付け、蒲焼きつみれ、唐揚げ、フライ、さつま揚げなどでおいしく味わえる。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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