コマイ【氷下魚】

コマイ【氷下魚】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類タラ目タラ科コマイ属
  • 学 名Eleginus gracilis
  • 英 名Saffron cod
  • 別 名カンカイ、カンギ、ゴタッペ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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タラ科には16属31種の魚が含まれ、日本近海ではコマイと並んでマダラやスケトウダラが分布している。いずれも、水産資源として重要な魚種である。
コマイは日本近海では北海道の沿岸部、とくに東部の根室海峡近辺に多く棲息し、そのほかに黄海、日本海、オホーツク海を含む北太平洋に分布する。


特徴

最大で50㎝・1㎏超まで成長するとされるが、通常は35㎝くらいまでのものが多い。細長い体で、腹の部分がやや太く、3基の背ビレと2基の尻ビレをもつ。このヒレの数はタラ亜科の魚の特徴で、スケトウダラやマダラも共通のものである。
体色は、背側が青みがかった茶褐色に不規則な暗色の斑紋がある。腹側は銀白色で、やや黄色みを帯びている。下アゴより上アゴが突き出ていて、下アゴにあるヒゲは短く、眼径の半分以下の長さ。アゴの形とヒゲの長短で、ほかのタラ類と区別できる。マダラはヒゲが眼径以上に長く、スケトウダラは下アゴが突き出ているのが特徴だ。


性質

水深200m以浅の寒冷な沿岸部に棲息。血液中に凍結を防ぐ物質をもち、水温が0℃以下でも棲息できる。
地域性が強く、大きな回遊はしないが、季節による浅場と深場の行き来はあり、産卵期には汽水湖にも出入りする。また、汽水湖に年間を通じて留まる個体もいる。
夜行性で群れをつくって回遊し、カイアシ類やオキアミ類などの浮遊性甲殻類、ヨコエビ類、等脚類、エビ類、ゴカイ類などの小型底棲生物を捕食する。
産卵期は1~3月頃。盛期は1月下旬頃で、岸近くの水温が氷点下かそれに近いところで卵を産む。根室海峡の野付半島付近がもっとも大きな産卵場として知られている。低水温でしか棲息できないわけではなく、20℃程度の水温でも活発に活動できるが、卵の孵化には2℃以下が適温であり、4℃以上になると孵化率が著しく下がる。
コマイは2歳までの成長が非常に早く、孵化した年の冬までに18~20㎝に成長し、2年で約28㎝に成長して成熟・産卵を行う。3年で約33㎝まで成長する。


文化・歴史

コマイはアイヌ語で、「小さな音がする魚」の意味とされる。アイヌ民族は、古くからコマイを凍結と乾燥を繰り返した干物のようなものにして保存食としていた。
現在では魚の身を凍結し、半解凍状態で食べるものをルイベというが、そもそもルイベとはアイヌ語で「溶ける食べ物」という意味で、主に上記のコマイのルイベを指したものであった。
北海道では、冬期に漁師が汽水湖の湖上の氷に穴を開けて網をかけ、コマイなどを獲る「氷下待ち網漁」が風物詩になっているが、それが由来で本種を「氷下魚」と書く。
体長によって、20㎝以下の幼魚はゴタッペ、30㎝台までの中型のものはコマイ、40㎝超の大型はオオマイと呼ぶこともある。


釣り方

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コマイは北海道の道南を除くほぼ全域で釣ることができる。写真のような港の岸壁や堤防はアクセスが便利で、チョイ投げやサビキ釣りで楽しめるほか、砂浜からの本格的な投げ釣りもOKだ。
厳冬期、汽水湖や海に繋がる河川が結氷すれば、穴釣りも楽しめる。ただし、氷が薄かったり浮き氷になっているケースもあるので、十分な注意が必要。

【投げ釣り】

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タックルは25号前後のオモリをキャストできるものを使用し、仕掛けは胴付きタイプ(一番下にオモリを付ける仕掛)が定番。冬期の場合、ミチイトはナイロンがお勧め。PEラインだと凍結することがある。
エサはイワムシやアオイソメでよいが、大物狙いではサンマの切り身も効果的だ。いずれも、冬期はエサの凍結に注意したい。
コマイは夜行性なので、基本的には夕まづめ(日没前後の薄明るい時間帯)〜夜の釣りが有利。群れで回遊してくるので、一尾釣れたら同じポイントを集中して狙いたい。

【穴釣り】

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ワカサギの穴釣り同様にドリルで汽水湖や海へ繋がる河川の氷に穴を開け、そこから仕掛けを水中に垂らす釣り方。
竿もワカサギやチカ釣り用のものか、短めのルアーロッドを流用する。仕掛けは、北海道で穴釣り仕掛けとして市販されている胴付きが定番だが、ブラーを使う人もいる。エサはイソメでOKだ。

製品例:
仕掛け


料理

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コマイは鮮魚で出回ることは少ないが、新鮮なものは非常に美味。とくに、12~2月頃が旬とされ、塩焼き(写真)や煮付け、フライ、鍋物でおいしく味わえる。お勧めは、釣れたてを三枚に卸して身を凍結し、薄切りにしたルイベ。バターのように舌の上でとろける味わいは、極上である。
なお、市販品ではカチカチの硬い干物が定番になっているが、自宅で作るときには生干しや一夜干しで軟らかく仕上げるとクセもなく、とても食べやすい。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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