カラフトマス【樺太鱒】

カラフトマス【樺太鱒】 イラスト:小倉 隆典
  • 分 類サケ目サケ科サケ属
  • 学 名Oncorhynchus gorbuscha
  • 英 名Pink salmon
  • 別 名セッパリ、アオマス、サクラ

釣りシーズン ベストシーズン 釣れる

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

分類・分布

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サケ属にはサケ(シロザケ)、ギンザケなどが属しているが、なかでもカラフトマスは、サケと並んでもっとも海洋生活に適合された種類であるとされている。
日本での分布は、太平洋側では岩手県以北、日本海側では新潟以北とされるが、北海道のオホーツク海と根室海峡に流入する河川への遡上が全体の95%以上を占める。ほかには、日本海側では北海道北部の河川で、太平洋側では三陸沿岸北部の河川で、わずかな遡上が認められている。
世界的にはサケ属中でもっとも分布域が広く、北は北極海に面したロシアのレナ川からカナダのマッケンジー川の間、北太平洋、ベーリング海、オホーツク海全域、日本海では朝鮮半島北部まで分布している。


特徴

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全長は成魚で40~60㎝、重さ2~2.5kgほど。背部は青緑色、体側から腹にかけては銀白色で、背面、尾ビレ、脂ビレに黒い斑点があるのが特徴だ。
繁殖期には、頭部と背部が黒っぽい灰色、体側は赤紫がかった茶色となり、さらに雄は背中が突起状に大きく変形する。そのため、「セッパリ」「セッパリマス」などの別名がある。また、雄は同時に口先が尖って上顎が下方に曲がってくるのも特徴だ。その一方、雌は体色が雄と同様に変わるくらいで、体形的な変化はほとんど見られない。
カラフトマスの稚魚は、ほかのサケ属の魚の稚魚に共通して見られるパーマークがなく、背部が青緑色で体側は銀色で、ほっそりとした体形をしている。


性質

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ほかのサケの仲間同様に、生まれた川に遡上して産卵するが、カラフトマスは母川回帰性が弱く、サケがほぼ100%の確率で母川回帰するのに対し、カラフトマスは60%程度である。違う川に遡上する個体も多いことがわかっている。
遡上時期は河川によっても異なるが、通常は7月中旬頃から始まる。産卵床はサケの産卵場所よりも流れが速い場所に作られることが多く、サケのように地下水が湧き出ている場所である必要はない。よって、サケの産卵場所とは棲み分けがされている。一ヶ所に1,000~1,500粒の卵を産み落とし、産卵後は寿命を終える。
受精からの積算水温が400~500℃になると孵化し、4~5月頃になって体長3㎝ほどの稚魚になると川底から抜け出して泳ぎ始める。浮上後はあまりエサを捕食せずに川を下り、一晩から数日で降海する。
海に入ると、オキアミやプランクトンなどを中心に活発にエサを取り始める。成長とともに沖合へ移動しながら小魚なども捕食し、北海道沿岸で生まれたものは、その年の秋までオホーツク海全体を生活の場とする。冬にかけては、北大西洋の西部水域に回遊して翌年春までを過ごし、その後、母川に向かって回帰する。その途上、急速に成長しつつ成熟し、夏には再び川に遡上する。
この2年間のサイクルから、前後の年生まれの集団同士が交じり合うことはなく、好不漁や遡上の時期などが、隔年で変動を示すことがわかっている。北海道では遡上時期が1年ごとに1ヶ月もの違いがあり、西暦の偶数年では早く、奇数年では遅い。


文化・歴史

前述の通り、産卵時の背の張り具合から「セッパリ」と呼ばれるほか、三陸を中心とした岩手県地方ではサクラ、またはサクラマスと呼ばれる。これは桜の開花時に定置網などでまとまって漁獲されることに由来する呼び名で、種としてのサクラマスは別の魚である。そのほかにアオマス(岩手県久慈地方)、ホンマス(北海道東部)などの呼称がある。
英語名はピンクサーモンで、これは身の色に由来する。海外ではサケよりもおいしいと評価が高いが、日本ではサケに比べてやや評価が低い。これは冷蔵技術が現在ほど発達しておらず、保存が塩蔵などに限られていた頃、まだ気温が高い時期に獲れ、身に脂肪分の多いカラフトマスは長期保存が難しかったことの名残りのようだ。
冷蔵技術の進歩した現在、カラフトマスは水産資源として重要な存在で、北太平洋域での漁獲高はサケよりも多い。また、一般に「鮭缶」と呼ばれる水煮の缶詰は、多くがカラフトマスを原料としている。


釣り方

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8~9月頃、北海道のオホーツク海、太平洋沿岸の堤防や海岸などにカラフトマスの群れが大挙して押し寄せ、この時期を待ちわびた多くの釣りファンで賑わう。ただし、河口周辺はサケ・マス類が釣り禁止になっているエリアが多いので、あらかじめ確認が必要だ。
また、河川内でのカラフトマス釣りは禁止となっており、正式に河川で釣ることができるのは、北海道の忠類川などで行われている「有効利用調査」による捕獲のみとなっている。

【ルアーフィッシング】

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カラフトマスを比較的簡単に狙えるのはルアーでの釣りだ。
海でも河川でもタックルは共通で、シーバス用や大型トラウト用のものが流用できる。ロッドは、ライト~ミディアムライトで、海岸や磯から釣る場合は遠投重視で8~9フィートを使用。ラインもPEが遠投に有利だ。ただし、河川の場合は遠投の必要がないためロッドは短めでよく、ラインもトラブルの少ないナイロンがお勧めだ。ルアーはスプーン(金属製の板状のルアー)が万能に使えるほか、近年ではミノー(小魚型ルアー)で楽しんでいるアングラーも多い。
釣り方の基本は、ルアーを遠投して一定の速度で引いてくればよい。表層近くをできるだけゆっくり引いてくることが大切だ。
河川の場合は、カラフトマスが定位する流芯のキワにルアーを送り込むのが肝心。キャストしたルアーを流れに乗せつつ、竿先でコントロールしながら川底を泳がせよう。ヒット後のファイトは強烈なので、ドラグはしっかり調整しておきたい。

【ウキルアー】

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ルアーを表層近くをできるだけゆっくり引いてくるために、北海道ではルアーから数十㎝の位置にウキをセットする「ウキルアー仕掛け」も一般的に使われている。リーダーの長さは魚のタナ(魚が泳いでいる層)に応じて調整したいので、ウキが遊動できる仕掛けが便利。これらの完成仕掛けは、道内の釣具店で入手可能だ。

【ウキフカセ釣り】

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海の釣り場で、ルアーよりも確実に釣果を得たいなら、ウキフカセ釣りがお勧めだ。
タックルはルアー用のものが流用できるほか、2~3号程度の磯竿を使う人も多い。仕掛けは発泡ウキを遊動式にセットし、ハリにはタコベイトや鶏の羽根などを装飾するのが北海道流。自分で作るのが面倒なら、市販品を使えば手っ取り早いだろう。ガン玉(小さな玉状のオモリ)は必要に応じて付ければよい。エサは、赤く染めた短冊のイカが定番。色落ちすると食いが悪くなるので、マメに交換してあげたい。
ウキ下はカラフトマスが回遊しているタナ(0.5~1.5m程度)にセットし、仕掛けを投入。そのまま潮流に乗せるか、ゆっくりと引いて誘ってくる。ウキに何らかの変化があったら確実にアワセを入れよう。

製品例
タコベイト


料理

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ムニエル

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ちゃんちゃん焼き

カラフトマスの旬は夏〜初秋。身は鮮やかなピンク色で、EPAやDHAを多く含む。料理方法はサケと同様に、ルイベ、ムニエル、塩焼き、フライなどでおいしく味わえる。
北海道のご当地料理、ちゃんちゃん焼きは、鉄板やホットプレートにキャベツ、もやし、ピーマン、ニンジンとマスの身をのせ、味噌とミリン、酒、ダシを混ぜたタレをかけて蒸し焼きにする。野菜の甘みと味噌の辛み、マスのウマミが溶け合って美味だ。

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

*監修 西野弘章【Hiroaki Nishino】
*編集協力 加藤康一(フリーホイール)/小久保領子/大山俊治/西出治樹
*魚体イラスト 小倉隆典
*仕掛け図版 西野編集工房
*参考文献 『週刊 日本の魚釣り』(アシェットコレクションズ・ジャパン)/『日本産魚類検索 全種の同定 中坊徹次編』(東海大学出版会)/『日本の海水魚』(山と渓谷社)/『海釣り仕掛け大全』(つり人社)/『釣魚料理の極意』(つり人社)

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